Bリーグ、「企業版ふるさと納税」の活用でアリーナ新設も。地方支援の新たなモデルとは
2016年の開幕以降、事業規模を大きく成長させ盛り上がりを見せるプロバスケットの国内リーグ「Bリーグ」。 さらなる改革に向け2026年からは新基準を策定し、Bプレミアへの参入基準として<5000席を収容するアリーナ建設>を要件のひとつに加えた。 これにより全国でアリーナ建設・計画構想が進む中、「企業版ふるさと納税」を活用したケースがある。 群馬クレインサンダーズのホームアリーナ「OPEN HOUSE ARENA OTA(太田市総合体育館)」(2023年完成)は、親会社のオープンハウスが企業版ふるさと納税を利用して群馬県太田市に総工費の一部を寄附し、太田市がアリーナを建設。 また、島根県松江市では、島根スサノオマジックがホームアリーナとして利用している松江市総合体育館を、新Bプレミア入会基準に適合したアリーナに改修するため、企業版ふるさと納税で応援してもらえる企業を募集している。 ● 企業版ふるさと納税とは? 企業版ふるさと納税とは、2016年に創設された制度で、正式名称を「地方創生応援税制」という。国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対し、企業が寄附を行うと、税制上の優遇措置が受けられるという仕組みだ。 通常、企業が寄附を行うと、寄附額の全額が損金となり、約3割の税が軽減される。企業版ふるさと納税では、さらに寄附額の約6割が法人関係税から税額控除を受けることができるため、企業は最大で寄附額の9割が軽減され、実質的な企業負担は約1割となる。 企業版ふるさと納税は2024年度末までとなっているが、内閣府は2025年度の税制改正要望で「企業版ふるさと納税」の5年間の延長を求める内容を盛り込んだ。 では、寄附をすることで企業にとってどのような税金軽減効果があるだろうか。また、税金軽減効果以外のメリットはあるのだろうか。税理士に聞いた。 ● 1000万円寄附をすると、税負担は約660万円の軽減に ーー企業版ふるさと納税を利用することで企業にとって具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。 「企業版ふるさと納税を活用すると、寄附金額の最高約9割の税金軽減効果があり、実質の企業負担額は寄附額の1割程度になるといわれています。しかし、企業の資本金の額や課税所得金額、納税地の地方公共団体の税率等により税額の軽減効果は異なります。 では実際に所得が1億円の企業が1000万円の寄附を行った場合、どのくらい税金が軽減できるのでしょうか。ここでは大阪市内の中小法人を例にシュミレーションを行いました。 企業版ふるさと納税による寄附をした場合は、法人税等の額から約660万円減額されることになります。そのため、寄附による実質負担は約340万円にとどまります。 また、上記の条件では、税額軽減額が最大となる寄附額は150万円で、90%を超える減税効果を得ることになります。つまり実質負担額はわずか数%で寄附をすることができます。」 ● 企業としてPR効果やイメージアップのほか、地方公共団体との関係構築につながる ーー企業にとって、税金軽減効果以外の企業版ふるさと納税のメリットをお教えください。 「企業が企業版ふるさと納税を行うメリットは、以下の3つが考えられます。 1つめは、PR効果及び企業イメージのアップです。 寄附によって内閣府地方創生推進事務局の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」や各自治体のホームページ等で企業の紹介がされることから、地域の施設建設やインフラ整備を支援し、社会貢献に取り組む企業としてのPR効果が得られるほか、企業イメージのアップが期待されます。 2つめは、地方公共団体との関係構築です。 国から認定を受けた事業に対して直接寄附を行うため、地方公共団体との新たな関係の構築や、地域資源を生かした新事業展開にもつながる可能性があります。 3つめは、被災地の復興や創業地など、縁のある地域への恩返しとしての支援を行うことができるという点です。」 ● 通常の「ふるさと納税」のように返礼品はないので注意 ーー企業版ふるさと納税を利用する際の注意点についてもお教えください。 「注意点としてはまず、『寄附先が限定されている』という点が挙げられます。寄附の対象となるのは、国が認定した地方公共団体の地方創生事業のみとなり、本社所在の地方公共団体や東京23特別区等は寄附先としては対象外となります。そのため、事前に寄附先の選定確認が必要です。 また、企業版ふるさと納税には、個人のふるさと納税のような返礼品はありません。経済的な利益を受け取ることも禁止されています。 さらに、寄附金を納めることにより一時的にキャッシュが減少するため、『予算管理に影響を及ぼす可能性がある』点にも注意が必要です。寄附をする際には資金繰りに気を付けなければなりません。 税額控除についても、割合の上限が決まっているため、軽減税額を満額受けられない可能性があります。そもそも控除するもととなる税額が少ない場合や、欠損で税額が発生しない場合には、寄附による税負担の軽減のメリットが十分享受できない点にも留意しましょう。」 【取材協力税理士】 三宅伸(みやけ・しん)税理士 大阪府立大学経済学部卒業後大手リース会社勤務。クラウド会計の導入をすすめ、インボイス制度や電帳法にも対応できるストレスフリーな事務環境を提供。常にお客様の立場に立って考え共に成長していくことをモットーに法人及び個人の会計税務、起業支援、相続等と幅広く活動している。また、無申告や税務調査のサポート対応も行っている。 事務所名 :三宅伸税理士事務所 事務所URL:https://miyake-tax.jp/
弁護士ドットコムニュース編集部