BMW5シリーズ 詳細データテスト 強心臓と洗練されたサスペンションを兼備 車体は大きくなりすぎ
はじめに
毎度のことながら、われわれは歴代のBMW5シリーズを高評価し続けてきた。その要因は、まず守備範囲の広さを失うことのないコンセプトにある。われわれの好むこのクラスのセダンは、単に高速道路で快適な乗り物であるだけでなく、まともなオンロードなら運転しがいがあると思えて、内装のクオリティも外装のデザインもまずまず満足できる高級感があって、さらに荷室に十分な実用性があるクルマだ。数十年にわたり、5シリーズはこれらの条件をクリアしてきた。 【写真】写真で見るBMW5シリーズとライバル (16枚) 先代のG30もそうで、むしろ歴代最優秀といってもいいくらいの出来栄えだった。520dは17km/L以上の低燃費も不可能ではなく、6気筒を積む540iなら築き上げてきた名声に恥じないパフォーマンスサルーンぶりを感じられたものだ。 そして最高峰モデルのM5CSは、ファミリーカーとしても使えるスーパーカーであり、そのカテゴリーにおいてはフェラーリ・プロサングエさえ霞ませるほどだ。ともかくG30の基礎は、走りの上質さからキャビンのエルゴノミクスまで、クラストップと言えることが多かった。 第8世代となるG60も期待に応えてくれる点は数多あるに違いない。加えて、G60はこれまでより伝統的なサルーンにこだわらず、非ハイブリッドの大排気量エンジンが用意されない。インテリアの先進技術も驚くほど進化した。ボディサイズや衝撃的なルックス、画素数や低エミッションといった、今日重視される要素を追求している。 それらすべてが、5シリーズを未知の領域へと導く要素となる。そこに、歴代モデルが見せた豊潤さは健在なのだろうか。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
G60のフロント周りは、SUVのiXに似た雰囲気がある。エレガントさを期待されるクルマに、このアプローチはいかがなものだろうか。とはいえ、チャレンジングな5シリーズはこれが最初ではない。E39では人気の高かったシャークノーズと決別し、バングル指揮下のE60はフレームサーフェスを含む斬新なデザインで賛否を呼んだ。 それらと同じく、G60は一目惚れできるクルマではないかもしれないが、スロープを描くトランクスペースは、ポール・ブラックが生み出したE12こと初代を彷彿させる。イタリア車的なルックスや、みごとなプロポーションもあわせ持つ。 この新型は、歴代最大の5シリーズだ。少し前なら7シリーズといってもいいくらいのサイズ感となっている。ホイールベースは先代比24mm延長された2995mmで、プラットフォームはCLARの長めなバリエーション。全長はついに5mを超えた。 それに伴い、ウェイトも増加した。エントリーモデルの520i Mスポーツは1725kgで、先代の同等モデルより115kg増。48Vマイルドハイブリッドの採用が、その一因といえるだろう。 フレキシブルなCLARプラットフォームが導入されたのは2015年だが、EV版のi5やPHEVを用意するべくアップデートされている。それを別にすれば、メカニズムはおおむねこれまでどおり。アルミ部材を用いたサスペンションには、スプリングと電子制御ダンパーを使用する。ICEモデルにはBMWが信を置くZF製の8速ATを積み、PHEV版はモーターを組み込んで並外れた経済性とまずまずのEV航続距離を実現する。四輪駆動はいまのところ、最上位グレードの550e xドライブだ。 英国仕様は、i5 eドライブ40を除く全車がMスポーツ仕様で、ハードなスプリングとダンパーを装備し、8mmのローダウンが図られている。EVとPHEVには、グレードを問わずリアにセルフレベリング機構を備えるエアスプリングが装着される。 550eには、ストローク依存型アダプティブダンパーを用いるアダプティブサスペンション・プロフェッショナルと後輪操舵が標準装備。i5 M60は、アクティブスタビライザーも備わるアダプティブMサスペンション・プロフェッショナルを採用する唯一のグレードだ。 少なくとも英国仕様に限っていえば、エンジンのラインナップはかつてほど多くはなく、ディーゼルは姿を消した。先代のM550iのような仕様もなく、味わい深いV8ツインターボを積むのは、M5だけとなりそうだ。 テストした550e xドライブのエンジンはB58型3.0L直6の312ps仕様で、197psのモーターを組み合わせる。総合出力は490psで、電動カムシャフト調整機構によりエミッション低減も図っているという。 このほかに設定されるのが、B48型2.0L直4で、マイルドハイブリッドで208psの520iと、PHEVで299psの530eに搭載される。もちろん、これ以外にEVのi5が選べるが、そちらはICEモデルより割高な価格となる。