ドラフト裏話「指名されないかも」名門・早大で静まり返った大教室→安堵の声…楽天5位指名のスラッガーに監督「宗山よりいいと思う」
大谷翔平の動画を参考に…「その通りにホームラン」
この秋、十河は吉納に「ストレートを引き付けて打ってみたら?」とアドバイスをしたという。驚いたのは、それを直ぐに体現したことだった。 「ドジャースの大谷翔平選手がストレートを自分の身体寄りで打っているんです。その動画を送ったら、その通りに東大戦で3ランを打って。吉納、やばいなと思いました(笑)」 本人は法政戦でドラフト候補だった左腕・吉鶴翔瑛から打ったレフトへの決勝3ランが印象に残っている。 「吉鶴はカットボールが良くて、ストレートも速くなっていました。だから内角は捨てて、2ストライクまでファールしながら外に来るボールを待っていました。真っすぐで押してきたので、『これで抑えたいんだな』と。カットボールがボール球になって、『次は真っすぐが来るな』と思い、読み通りに外角に甘く来た球を捉えることができました」 吉納は前向きで数字の目標も大きい。これを十河は『吉納ワールド』と表現する。 「誰かに負けると思ってない。メジャーの選手を参考にアドバイスしたりするんですが、『今はまだまだですが、絶対にメジャーに行けると思っているんで頑張ります』と。本気でそうなろうと貪欲に努力している。向上心が彼を引き上げているのかなと。可能性に蓋をしないですから。大谷選手の思考とも似ているのだと思います」 吉納本人もメジャーへの憧れを認める。 「3年生の春、アメリカ遠征でドジャースタジアムとエンゼルスタジアムに行って、『こういう環境でプレーしたいな』とシンプルに思いました。メジャーは地球上のトップレベル。早稲田の先輩である青木(宣親)さんも行っていて、自分もいつか目指したいなと思っています」 大学選手権準決勝、秋の法政戦も、ここぞという場面での3ランだった。十河は「役者だな」と感じるときがあるという。 「周りが期待しているシーンをわかっていて、そこで結果を残している。“持っている”感じはします」 空振り三振でも、堂々とベンチに戻る。話していても、弱気なことは言わない。そんなメンタリティもプロ向きとみる。 秋季リーグ優勝は目前だ。春はチームメイトの尾瀬雄大が首位打者をとり、主将の印出太一も、山縣もベストナインをとって、この上ない喜びを感じたという。
明暗分かれた「2人のスラッガー」…この先は?
印出と吉納。 中学のボーイズリーグからしのぎを削りあって、約10年が経った。「お互いに早稲田に入ることになって、心強かった」と口をそろえる。一方で、このドラフトではその明暗がくっきりと分かれる形になった。それでも2人は、残された目標に向けて邁進する。 何としてもリーグ戦優勝へ。そして春は逃した日本一へ――明治神宮大会でも優勝したい。その先に今年は台湾遠征があるという。高校2年の時にも遠征した思い出の地に再びいくことは、できるだろうか。
(「大学野球PRESS」清水岳志 = 文)
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