新入幕・獅司2連勝で初の懸賞金獲得 ウクライナの両親へ「ネットで送ります」
◇大相撲九州場所 2日目(2024年11月11日 福岡国際センター) ウクライナ出身で初の新入幕となった獅司が、武将山を寄り切って2連勝とした。幕内力士として初の懸賞金3本も獲得。入門後、一度も帰郷できておらず、毎日、連絡を欠かさない27歳は、母国にいる両親への送金を約束した。3大関は初日に続いて安泰。新大関・大の里は王鵬を素早い攻めで押し倒し、幸先良く2連勝とした。 連勝発進した獅司が苦笑いした。武将山を右四つがっぷりから寄り切った取組後。「何で懸賞金をもらわなかったの?と聞かれました」と前夜、ウクライナの母マリアさんとのやりとりを明かした。 初日の時疾風戦は寄り切って幕内初白星を挙げたが、懸賞金が付かなかった。母国でネット視聴する母の細やかな観察眼の証だろうか。部屋へ戻ってかけた国際電話で、全取組に付くわけではない懸賞金(手取り1本3万円)について指摘を受けたという。 この日は付いた。しかも3本。「お金をいっぱいもらって送ります」。先月28日の新入幕会見で昇進を喜んだ孝行息子は、「ネットで送ります」と笑った。 相撲は新入幕らしからぬ安定感が際立った。この1年で10キロ増え、175キロになったという馬力で出た。20年春場所初土俵で、ウクライナ出身初の力士。来日当初から「魚、大好き。しょう油でOK」と日本食に適応してきた。 自らのしこ名にかけてうれしければ「うれシシ」、悲しければ「かなシシ」をキャッチフレーズとする。一方で、おいしくても「おいシシとは言わない」。最近習得に励む左四つとは逆の型でつかんだ初の懸賞金同様、未知の魅力に満ちている。 ▽懸賞 幕内の取組に対し企業などが希望の取組、応援する力士に懸けるもの。懸賞旗を掲げ「広告」的な要素も含む。1本7万円。日本相撲協会の事務経費1万円を引いた6万円が勝利力士の獲得金となる。内訳は所得税に充てるための積立金が3万円、残りの3万円が土俵上で受け取る額となる。