特異能力を秘めた不思議な生き物×おっとり少年のちょっと不思議な毎日『猫のようなナニカ』【書評】
とにかく癒されると評判の猫マンガ(?)がある。猫に似た謎の生き物「ナニカ」と、その拾い主である男子小学生・連矢の日常を描く『猫のようなナニカ』(アヅミイノリ/KADOKAWA)。ちょっと不思議であたたかいその世界観に、多くのファンが魅了されている。 【漫画】本編を読む
雨の日の帰宅途中、連矢は雨宿りをしている黒くてふさふさした生き物を発見する。捨て猫だと思い家に連れ帰った連矢だったが、奇妙なおなかの音や天井に張り付く姿を目の当たりにすると「猫じゃないのかもしれない」と訝しがる。こうして、おっとりした性格の連矢と謎に包まれた「ナニカ」の不思議な毎日が幕を開けた。
まずはなんといっても、ナニカの見た目のかわいらしさを語らずにはいられない。作者のアヅミ先生が「猫に癒されたい!」という一心で描いたというナニカは、その言葉通りまさに癒し系だ。 大きな瞳に流れるような長い毛並み。にゅっとまっすぐに伸びたしっぽはふわふわなのか、はたまた弾力があるのか、気になるところだ。表情はあまり変化しないが、目を白黒させたり体をのけぞらせたりするなどリアクションはとっても豊か。しおしおと溶けていく様子も実にキュートだ。連矢の言葉も理解できているようで、兄と弟のような連携をみせるときもある。 限りなく猫に似ているその風体だからこそ「こんな猫がいたらおもしろいだろうな」という想像を搔き立てられてしまう。
水を浴びて縮んだかと思えば、子どもを飲み込むほどの巨体へも変化するナニカ。足と口は見当たらないが、好物のメロンパンを嬉々として平らげる。 見た目は至極猫っぽいのに、明らかに猫とは一線を画すしぐさをみせる謎多き生き物。果たしてその正体は妖怪だろうか? 未確認生物? それとも宇宙人? しかしそんなナニカの様子が当たり前のように淡々と描かれていくものだから、気づけばナニカのいる不思議な世界を受け入れてしまっている。 連矢が「猫ってこういう生き物なんだろうな」とナニカの変わった振る舞いをあまり気にすることがないのも、ほのぼのとした空気を生み出していていい。