特異能力を秘めた不思議な生き物×おっとり少年のちょっと不思議な毎日『猫のようなナニカ』【書評】
あるがままの相手を受け入れる。理想だけれどなかなかできないことを、幼い連矢がさらっとやってのけているから愛おしい。ナニカもそんな連矢の思いに応えるように、彼を守ろうと純粋に行動する。連矢に害をなす相手がいれば、もちろん容赦はしない。
ナニカは連矢の願いに耳を傾け、必要とあらば自らを犠牲にして彼を助ける。そんなナニカの行動からは連矢への深い愛情がにじみ出ている。本作は驚異的なパワーを備えた生き物とそれを受け入れる少年との日常譚にとどまらず、種族の違いを超え、お互いを思いあう心の交流が描かれているところがなによりの魅力だ。ナニカと連矢の相思相愛な様子は、読者の心をきゅっとしめつける。
クライマックスでは仲睦まじい連矢とナニカの元に不穏な報せが届く。このままでは一緒にいられなくなってしまうかも…突然のタイムリミットを前に、ふたりはどんな道を選ぶのだろうか。猫好きもそうでない人も、もれなく夢中になってしまう不思議な物語『猫のようなナニカ』。心温まるふたりの毎日をぜひ楽しんでいただきたい。 文=ネゴト/ あまみん