学校のアンガーマネジメント―受け持った学年の幼さにイライラする先生
事例11 結果を求めるあまり、焦ってしまう中学校2年生の担任
アンガーマネジメントを知り、難しさも感じましたが、中学校3年生への生徒指導に活かしてきました。現在担任の中学校2年生は幼く、落ち着きが足りず、昨年度の生徒と比べてうまくいかないこともあります。結果を求めるあまり、生徒にイライラを感じます。なぜこんなにもイライラするのか理由を知りたいです。また、余裕をもって生徒に接することができる方法はあるでしょうか。
“アンガーマネジメント”を取り入れた対応 今年度の生徒を観察する
昨年10月から半年にわたってアンガーマネジメントに取り組んでいただいたとのこと。指導のかいあってたくましく成長した生徒たちの卒業を誇らしく見送ったことでしょう。それと比べ、今年担当の中学校2年生への指導が思ったようにできないことに悩んでいるのですね。 さて、中学校3年生の3月と2年生の4月では2年もの時間の差があります。2年生の生徒の言動に3年生との違いを感じるのは当然のことです。 昨年度の生徒との思い出は先生がめざす理想の状態。すでに実践できているのですから、再現ができると捉えることができます。こうした考え方をすると指導の意欲がわいてくることでしょう。 まず、生徒の姿を受け止めることから始めることを大事にしてください。
先生自身が成功体験を
1.なぜイライラ? ➡ 怒りの原因を思い出す 怒りの原因は「誰か」や「出来事」ではなく、自分の「べき」です(2023年11月号を参照)。怒りの原因は自分の理想や願望、欲求を表すことばで、「はず」「普通」「常識」「当たり前」と考えていることです。怒りを感じたら、そこに隠れている「べき」を書き出すことが大事です。これまで「誰かのせいで」「こんなことがあったから」と考えていたと思いますが、自分にどのような「べき」があるのかを分析することを大事にしてください。 2.うまくいかない ➡ サクセスログ アンガーマネジメントは練習しながら上達していくものですから、うまくいかないこともあります。そのトレーニングを継続する際、「サクセスログ」が助けになると思います。「サクセス」と言われると、100点や金メダルを取ることを思い浮かべます。 ここでいう「サクセス」は、朝時間通り起きた、出勤できたなど、できて当たり前と思われることを成功と捉えます。先生が自分に小さなOK を出すことで自己肯定感が上がっていきます。そのような自分になれれば余裕をもって生徒に接することができます。成功を記録すること、取り組んでみてください。 3.知っている ➡ 心理トレーニングの継続を アンガーマネジメントは怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング。知識として知っているだけではアンガーマネジメントは上達しません。 イラッとするたびに「アンガーログ」や「べきログ」をつけ、自分自身の怒りの傾向を理解できるようにします。イラッとしたら衝動をコントロールし、思考をコントロールし、行動をコントロールすることを続けてください。 日本アンガ―マネジメント協会の理念は「怒りの連鎖を断ち切ろう」。アンガーマネジメントができる人は怒りを連鎖させません。先生自身が怒りを連鎖させない人になってほしいと思います。担任している生徒たちは次の社会を創り、生きていく存在です。アンガーマネジメントができる人が増えたら、今よりもっと住みやすい社会を創ることができます。 11回の連載をご高覧いただき、ありがとうございました。私事になりますが退職して9年目、「日本中の教室にアンガーマネジメントを」という願いを込め、執筆させていただきました。 末筆ながら先生方が教職を全うされること、児童生徒の健やかな成長と幸せを祈念しています。 □アンガーマネジメントに関する最新情報は、協会公式サイトにてご確認いいただけると幸いです 参考:『アンガーマネジメントトレーニングブック2024年版』(ミネルヴァ書房 監修 日本アンガーマネジメント協会) 川上 淳子 一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定アンガーマネジメントシニアファシリテーター。Edu Support Offifice代表。元宮城県公立小学校教諭。元国立大学法人宮城教育大学非常勤講師。 *『月刊教員養成セミナー2024年8月号』 コロナ禍を経て、なお先行きが見えない今、教室を安心安全な居場所とする働きかけが急務です。アンガーマネジメントの理論と方法は、児童同士、児童と担任を繋ぎ、よりよい関係づくりに活かすことができます。場面指導でも問われるケースを解説します!