幻の天然スイーツ「ミツツボアリ」をオーストラリアまで食べに行ってきた【実食レポ】 #食楽web #ミツツボアリ
つぶしてしまわぬように指先でそーっとつまみ、口へ運び静かに舌と上顎でつぶしてみる。すると、蜜の芳醇な甘さが口に広がります。 前述の通り、アリといえば、「蟻酸(ギ酸)」という酸っぱい成分が特徴。そう、アリは食べるとだいたい酸っぱいのです。なので、蜜と蟻酸の甘酸っぱいハーモニーを期待していたのですが、ミツツボアリの場合どうやら酸味はなく、甘さだけを堪能できるアリのよう。 掘り出されたタンク役のアリをいくつか並べて見てみると、色が少し違うことがわかります。白っぽいものと、茶色っぽいもの。ガイドさん曰く「茶色い方がより甘く、メープルシロップのようだ」とのこと。 ということは、逆に言えば白い方は甘くないのか? 実際に白いアリを食べてみると、なんと甘みの中に酸味が口の中を通り抜けるではありませんか。ミツツボアリは、ハズレとされる酸っぱい個体がいるようです。数十匹を食べてみたところ、茶色い個体はすべて甘く、白い個体の中には何匹か酸味を持つアリがいることが確認できました。
土の中のミツツボアリの姿を見てみると。巣穴の中に、タンク役のミツツボアリがコロコロと何匹かまとめて入っているのがわかります。 お腹を下にして身動きを取ることができないまま、ぶら下がり、一生をタンク役として役目を終えます。これが乾燥地帯の、貴重なおやつ。アボリジニの間に、代々受け継がれている食文化なのです。
この後、ガイドさんがミツツボアリのケースをプレゼントしてくれました。なんとガイドの息子さんが、3Dプリンタで「ミツツボアリ専用ケース」を作ったというのです。まさに伝統と最新技術の組み合わせ!
このケースのおかげで、ホテルにミツツボアリを持ち帰ることができ、紅茶に入れてミツツボアリティーを堪能できたのでした。 ちなみに後日、筆者のX(twitter)にてこのミツツボアリの投稿をしたところ、予想外に拡散されて、170万回も表示されたのも驚きでした。「食べてみたい」と言う人や、小さい頃にアリを食べた体験を思い出す人、ゲームの敵キャラクターを思い出す人などなど、多種多様な反応が寄せられ、非常に楽しかったです。
今年2月には昆虫食、特に食用コオロギへの反対の投稿が相次ぎ、筆者が関わったYahoo記事には4000件もの批判コメントが寄せられたのですが、ミツツボアリに対する反応は、同じ昆虫とは思えないほど好意的なものが多かったのが面白いですね。 昆虫食への嫌悪感をものともしない、魅惑的な甘い蜜を持つミツツボアリ、南半球まで食べにいく価値は確かにあったと言えるでしょう。
(撮影・文◎吉田誠)