アップル、Amazonも生成AI環境構築で頼る最強の裏方企業「AWS」、カスタムシリコン戦略を強力に推進
顧客が必要としているものを提供する、どんなビジネスでも共通する最強のビジネスモデルだが、進化が早いIT業界でそれを実現するのは「言うは易く行うは難し」の典型例だ。では、それをAWSはどう実現しているのかと言えば、AWSには最も身近に非常に巨大な「ファーストカスタマー」がいて、そのファーストカスタマーでさまざまな実験をして、そのノウハウを顧客に対して提供することを可能にしているのだ。そのファーストカスタマーであり、かつ最大の顧客がAWSの関連会社であるAmazonだ。2024年のre:InventにはAmazon CEO アンディ・ジャシー氏もゲストとして登壇し、AWSのサービスがどのように使われているかを説明した。
AmazonのECを支える巨大な倉庫・配送拠点で配送商品の出荷プロセスの最適化、倉庫・配送拠点で動作しているロボットや、Amazon Prime Videoのリコメンデーション(アプリなどでユーザーにお勧めの動画を紹介する仕組み)、無人店舗「Amazon Go」などにはいずれも生成AIが使われ、迅速に製品を出荷したり、よりユーザー体験を提供したり、場合によっては無人店舗により効率アップなどを実現している。
さらに、スマートフォン向けアプリに生成AIを活用したAmazonのコンシェルジュ機能「Rufus」(ルーファス)に関しても紹介された。Rufusを使うと、一般消費者は小売店で店員に相談しながら購入するというユーザー体験をスマートフォンで通販を活用する時に再現することができる。 そうしたAmazonの生成AIを活用したイノベーション(技術革新)を支えているのがAWSのAIインフラとなる。そのITインフラを、横展開してAmazon以外の顧客に提供する事業、それこそがAWSの事業ということになる。
■アップルの生成AI「Apple Intelligence」を支える そうしたAWSが今力を入れている事業がある。それが「カスタムシリコン」と呼ばれる、事業会社が自分で設計し、TSMCのようなファウンドリー(受託半導体製造事業会社)に委託して生産している半導体製品事業だ。このカスタムシリコンを設計するために、AWSは2015年にAnnapurna Labsというイスラエルの半導体設計企業を買収し、そのAnnapurna LabsがAWS向けの半導体を設計し、ファウンドリーで製造して自社のサービスなどに活用している。