リスク顧みず北日本分断図った眞杉匠に帝王・山田裕仁氏も驚き「この選択肢をとるとは」/青森競輪G3・決勝レース回顧
佐々木がGIII初優勝、3連単は28万6,510円
先頭の佐々木選手がリードを大きく開いて最終2センターを回り、それを新山選手、森田選手、守澤選手が追うという隊列で、最後の直線へ。新山選手の直後にいた森田選手が、ここで外に出して新山選手を差しにいきますが、先頭の佐々木選手にはとても届かない。森田選手の後ろにいた守澤選手も追いすがりますが、その脚色は森田選手とほとんど同じで、前との差は詰まりません。 後続を大きく引き離した佐々木選手が、そのまま先頭でゴールイン。初となるGIII優勝を、豪快な走りで決めてみせました。2着は森田選手で、3着に守澤選手。高橋選手の番手から捲った新山選手は、よく粘るも4着に終わっています。眞杉選手は北日本の思惑は粉砕するも、人気には応えられず8着という結果。人気の北日本勢と眞杉選手がいずれも崩れたことで、3連単は28万6,510円という超高配当となりました。 GIII初優勝を決めた佐々木選手は、完全に「展開が味方した」結果の快勝とはいえ、仕掛けてからの伸びは素晴らしかったですね。この後はホームバンク・川崎での協賛競輪(GIII)に出走予定で、この優勝によって主力級の扱いとなることでしょう。そこでどのような結果を残せるかが、今後さらなる成長を遂げられるかどうかの“分岐点”となるかもしれませんね。勢いに乗って、いい走りをみせてほしいものです。 2着の森田選手と3着の守澤選手も、自分の力でもぎ取った結果という印象はなく、展開にうまく乗れたという側面が大きい。森田選手も北日本を捌いて勝負にいってはいますが、外競りから「やるべきことをやり抜いた」眞杉選手と比較して、反省点の多さを感じているかもしれませんね。車番によっては眞杉選手ではなく、森田選手がその役割を担っていたかもしれないわけですから。
リスク顧みず北日本分断図った眞杉
眞杉選手の走りについては、外競りから潰し合いになるくらいならば素直にタテ脚で勝負したほうがよかったのでは… と感じた人もいるかもしれません。しかし、それはあくまで結果論で、その場合には北日本の二段駆けの前に捲り不発に終わり、存在感をまったく発揮できずに終わっていた可能性もあります。個人的には、新山選手を狙って北日本勢の分断を図るというのは、納得の走りなんですよね。 とはいえ、私は眞杉選手がこの選択肢をとるとは思っていませんでした。というのは、眞杉選手は今年6月~9月の「違反点数」が112点もあって、これが120点を超えてしまうと、後にあっせん停止のペナルティを受けることになるんですね。それを考えると、外競りからの北日本分断という手段を選ぶのはけっこうリスキーなのですが…… しかし、眞杉選手はリスクを顧みなかった。それよりも、自分らしい走りをすることを選んだのでしょう。 選択肢のなかで、自分のできることを精一杯やる。アグレッシブさを失わず、どこまでも強気に戦いにいく。いい結果こそ出せませんでしたが、「北日本の好きにされて負けるようなレースは絶対にしたくない」という眞杉選手の心の声が聞こえてくるような、気持ちの入ったアツい走りだった。こういうレースもまた、競輪という競技の面白さ、奥深さを伝えてくれるものだと思います。