香港民主派指導者ら45人に禁錮4~10年…国安法違反判決、活動に決定的な打撃
裁判には多くの支援者が傍聴に訪れ、関心の高さを示した。最初から傍聴を続けてきたという女性(70)は「彼らは正しく、何も法を犯していない」と憤った。裁判を巡っては、これまで欧米各国から「通常の民主的な政治参加」との批判が上がっていた。香港メディアによると、この日も欧米各国の多くの外交官が裁判を傍聴した。
鄧炳強・保安局長は判決後、「判決は事案の重大性を反映し、厳罰が必要だと示した。国家の安全を脅かす行為を容認しないメッセージを社会に伝えた」と強調し、民主派を抑え込む判決の正当性を主張した。
[Q]香港民主派とは…反中強まり抗議運動
Q 香港の民主派とは。
A 民主派は元々、中国の「一国二制度」を受け入れながら穏健な変革を試み、共産党の一党支配が続く中国本土や香港の民主化を目指していた。2014年に起きた香港行政長官選の民主化を求めた道路占拠運動(雨傘運動)の後、旧来の民主派に加え、反中意識の強い政党が生まれた。こうした流れもあり、19年に大規模な反政府抗議運動が起きた。
Q 民主派が予備選を実施した経緯は。
A 19年11月の区議会(地方議会)選で民主派が圧勝した。当時、選挙で民主派の得票率は約6割とされ、立法会選でも過半数を得るため、予備選で候補者を絞り込もうとした。予備選の候補者となり、国安法違反に問われた被告の中には、民主派もいれば、抗議運動から生まれた「抗争派」と呼ばれる人たちもいた。
Q 予備選後の民主派の状況は。
A 予備選の直前に施行された国安法によって、多くの民主活動家が海外に逃れ、香港にとどまった人たちも摘発されるか、口を閉ざさざるを得なくなった。民主派政党も立法会や区議会で議席がなく、影響力は乏しい。24年3月には国家安全条例が施行され、閉塞(へいそく)感が増し、政治離れも進み始めている。
「司法の中国化」象徴…立教大教授(香港政治)倉田徹氏
民主主義国家では通常、野党が政府の予算案否決を目指す行為は罪に問われないが、この裁判では、それを国家政権転覆罪に問うた。判例を重視する英国式法体系のコモン・ローを採用する香港の司法が、中国のコントロールを受けるようになったことを示している。