81歳のバイデン大統領が左派にたたかれ続けるワケ・・・ネタニヤフ首相と犬猿の仲、股裂き状態
世界のイスラム教徒約19億人はパレスチナに同情的です。「グローバルサウス」と呼ばれる諸国の多くはインドを除き、大半がパレスチナ寄りです。「国際世論」ではイスラエルとアメリカは多勢に無勢です。多くの女性や乳幼児まで犠牲になる事態に、当初はイスラエルに同情的だった欧米の世論も変化しました。 ■米大学で若者がイスラエルとバイデンに抗議 バイデン米大統領はハマスの大規模テロに対するイスラエルの「自衛権行使」を容認し、武器、弾薬を大量に供給しました。事件後すぐイスラエルを訪問しました。バイデンがネタニヤフとハグした映像を見て勘違いした人もいたようです。ふたりは犬猿の仲です。バイデンは耳元で「ここまでしてやってるんだから、少しはオレのいうことを聞けよ!」とささやいたかもしれません。
バイデン政権は当初からガザの民間人犠牲者の増大を心配していました。ハマスが立てこもる地下トンネルの規模と精巧さから、ネタニヤフが掲げる「壊滅」の困難さを見通していました。イスラエルに軍の大半をガザから撤退させ、標的を絞った精密攻撃主体に移行するよう働きかけていました。ネタニヤフは聴く耳を持ちませんでした。 ハマス戦闘員だけではなく一般住民の犠牲者が急増するにつれ、民主党リベラル派からバイデンへの批判が強まっていきます。
2024年春、ユダヤ系の多いニューヨークのコロンビア大学をはじめ全米各地の大学で、イスラエル軍のガザ攻撃やバイデンの武器支援、大学の兵器産業への投資などに対する抗議行動が激しくなりました。ユダヤ人学生の一部も参加しました。イスラエル消滅を意味する「(ヨルダン)川から(地中)海まで」の「パレスチナ解放」を叫ぶ学生が目立ち、ハマス戦闘員の格好をする若者も現れました。指導的な活動家が「シオニスト(ユダヤ民族主義者)は生きるに値しない」とSNSに投稿し、謝罪に追い込まれました。
ユダヤ系の学生の大半は「なぜハマスのテロを批判しない」「怖くて大学へいけない」「ユダヤ人だけオンライン授業なのはおかしい」「われわれが白人だから差別してもよいのか」と反発しました。抗議の学生が学内の施設を占拠し、大学当局が警官隊に排除を要請する事態も起きました。 ■ネタニヤフとハマスの共倒れ望むバイデン バイデン大統領は、ネタニヤフ首相の苛烈なガザ攻撃を止めないと、民主党の左派にたたかれ続けます。でもパレスチナ支持の左に寄り過ぎると、今度は中道派が離反し、本選挙でトランプに負けてしまいます。股裂き状態です。急進派と穏健派、理想主義者と現実主義者が対立するリベラル陣営の一種の宿痾(しゅくあ)です。