パチンコホールはなぜキャッシュレス化できないのか?立ちはだかる難題の数々 依存症対策と逆行、違法な現金化への懸念…かつてのプリペイド方式が頓挫した経緯も
設備投資によるホールへの大きな負担
パチンコホールでのキャッシュレス化が進めば、非現金派のユーザーを呼び込めるかもしれないが、ホール側にはさまざまな負担がかかるという側面もある。 まず、ホールにおける設備投資の問題がある。現在使われている現金専用のサンドだけでなく、キャッシュレス決済に対応したサンドの導入が必要になる。昨今、売上が減少して厳しい状況に追いやられるホールが多いなか、キャッシュレス化のための新たな設備投資ができない店も少なくないはずだ。さらに、設備投資がキャッシュレス化で増える売上に見合うものかどうかを考えた末に、導入見送りを選択するホールも出てくるのではないか。 また、クレジットカードで決済した場合、毎回手数料がかかることとなるが、それを負担するのもホールとなる。その手数料がホールの経営を圧迫するであろうことは想像にたやすく、そのしわ寄せが“出玉の削減”という形でユーザーに転嫁される可能性もある。キャッシュレス化によって、ユーザーが最も強く求める“出玉でのサービス”が損なわれるならば、逆にユーザー離れが進むことも考えられる。
思い出される偽造プリペイドカード問題
のめり込み対策という点では、パチンコホールにて1日で利用できるキャッシュレス決済の限度額を設けるというアイディアもある。 「仮にホールでキャッシュレス決済が使えるようになったら、限度額の設定は絶対に必要だと思います。一部ホールで導入されているデビットカードでの支払いも、1日3万円までという限度額が設定されています。また、パチンコホール内に設置されているATMについては、1日3万円まで、月に8万円まで、1日2回までという利用制限があります。少なくとも、こういった形での限度額設定がないと、依存症対策を無視することになるのは間違いないでしょう」 また、電子マネーなどで購入できるプリペイドカードを導入するというアイディアもあるだろう。 「以前、多くのパチンコホールではプリペイドカードを導入していました。店内にカードの販売機があり、そこで現金を使ってプリペイドカードを購入。そのカードをサンドに入れて遊技するという形でした。“電子マネーでなら1日○万円まで購入可能”という形で制限を設けて、そういったプリペイドカードを販売すれば、たしかにのめり込み対策もできるかもしれません。 ただ、問題となるのはプリペイドカードの偽造です。1990年代後半には、パチンコホールで使える偽造プリペイドカードが蔓延してしまい、ホールに大打撃を与え、結果的にプリペイドカードから現金遊技へと切り替わりました。 そういった問題が発生する可能性を考えると、現金よりもセキュリティに不安があるプリペイドカードを導入するハードルは高い。危なっかしいものに設備投資するほど、ホールも余裕がないでしょう」 乗り越えるべき障壁が山ほどある、パチンコホールでのキャッシュレス化。ユーザー獲得のため、実現を求める業界の声もあるが、一方でユーザーはどう思っているのだろうか。後編記事では、ユーザーの生の声に耳を傾ける。そこには期待と不安が交錯する“パチンコユーザーの本音”が垣間見えた。 ■後編記事:パチンコの“キャッシュレス化”議論、ユーザーたちの本音 「際限なく使いそうな怖い誘惑」「財布の中の千円札が減るのは助かる」…期待と不安の声が交錯