致死率3割の"劇症型感染症"はどこまで増える? 「人食いバクテリア」の正しい怖がり方
劇症型溶血性レンサ球菌感染症、通称「人食いバクテリア」。急激に症状が進み、致死率も高いこの恐ろしい感染症が、2023年に過去最多の患者報告数を記録した。果たして、このまま増え続けるのか? 対策はあるのか? 感染症のスペシャリスト・岩田健太郎氏にじっくりと話してもらった! 【図表】「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の患者数 ■溶けた組織が水のようにサーッと流れて...... 通称「人食いバクテリア」とも呼ばれ、致死率が30%を超えるという恐ろしい病気、「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の感染者が日本で増えているという。 この感染症は新型コロナと同じ感染症法上の「5類」に分類され、保健所への届け出義務が課されている。厚労省の発表によると2023年の報告例は全国で941例(速報値)と、1999年に届け出制が始まって以来、最多となった。 「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」(Streptococcal Toxic Shock Syndrome/以下、STSS)とは、その名のとおり「溶血性レンサ球菌」という細菌が引き起こす感染症の一種で、特に重篤な症状を伴うものを指す。 臨床の現場でこの病気の症例を数多く診察した経験を持つ、感染症のスペシャリスト、神戸大学の岩田健太郎教授はこう話す。 「新型コロナウイルスのように国外から流入した新たな病原体とは異なり、通称『溶連菌』と呼ばれる『A群溶血性レンサ球菌』は日本も含め、世界中、どこにでも当たり前のように存在する細菌です。毎年、5歳前後を中心とした多くの子供が感染し、咽頭炎を引き起こすことでも知られています。 ただ、それとは別に同じA群溶連菌でも皮膚や皮下脂肪に感染を引き起こすタイプもあり、極めてまれですが、一部の感染者に敗血症ショック症状や肝不全、腎不全、急性呼吸窮迫症候群、意識障害といった非常に重篤な症状をもたらすケースがあり、これがSTSSです。 また、それとは別に『人食いバクテリア』という、俗称の由来になった病気が『壊死(えし)性筋膜炎』です。 壊死性筋膜炎は溶連菌に感染した組織の筋膜(臓器や筋肉をつないだり、包んだりする組織)がドロドロに溶けて壊死してしまう......というメチャクチャ恐ろしい症状で、患部にメスを入れると、そこから溶けた組織が水のようになってサーッと流れ出てくる。 実際にそれを見ると『人食いバクテリア』という、いささかセンセーショナルな俗称も、ある意味では『言い得て妙』だと感じます。 もちろん、命の危険を伴う、それも、文字どおり一分一秒を争う病気ですから、壊死性筋膜炎の疑いがある患者さんがいると聞けば、僕らは何をおいても最優先で対応をすることになります」