英自爆テロ 実行犯はリビア系、捜査情報の漏えいで英米に軋轢も
22日の夜に英マンチェスター中心部の「マンチェスター・アリーナ」で発生した自爆テロでは、8歳の少女を含む22人が死亡し、59人が負傷する大惨事となった。事件現場となったアリーナでは米女性歌手アリアナ・グランデのコンサートが行われていたが、コンサート終了後に観客が出口に向かって移動していたホワイエ(劇場で見られる出入り口と客席の間にある通路空間)で爆発が発生。事件から間もなくして、マンチェスターで生まれ育った22歳のリビア系イギリス人青年が実行犯であったことが判明。死亡した容疑者は以前から過激思想に染まる様子を友人らから心配されていたものの、5年前から何度も通報を受けていた警察は具体的に動くことはなく、テロを未然に防ぐことの難しさが浮き彫りとなった。また、捜査情報がアメリカによってリークされたとしてメイ首相が不満を表明するなど、前代未聞の事態が続いている。 【写真】ベルギーだけではなく欧州も一枚岩になれず 「テロ対策」情報共有の難しさ
自爆犯はマンチェスターで生まれ育ったリビア系22歳
マンチェスター・アリーナで行われたアリアナ・グランデのコンサートは事前にチケットがソールドアウトしており、2万人以上が会場内にいたと伝えられている。コンサートが終わった直後に、チケットを持たない者も入ることができるホワイエで、マンチェスター出身のサルマン・アベディ容疑者はバックパックに入った手製爆弾を起爆させた。爆発が起こった現場ではネジやナットが多数発見されており、捜査当局は殺傷力を高める目的でネジなどが使われたという見解を示している。現在までに8歳の女児を含む22人の死亡が確認されている。 米下院国家安全保障委員会で議長を務める共和党のマイケル・マッコール議員はAP通信の取材に対し、「マンチェスターで使われた爆弾は過酸化アセトンを用いた物だった」とコメントしている。過酸化アセトンは2005年のロンドン同時多発テロや、2015年のパリ同時多発テロでも爆薬として使われ、昨年もベルギーのブリュッセルで地下鉄と空港ターミナルが自爆テロの標的となった。 自爆によって死亡したアベディ容疑者の父親は、90年代の初めまでリビアの公安部に勤務していたが、カダフィ独裁政権に反旗を翻し、祖国を追われる形で1993年にイギリスに移り住んだ。1995年にはアベディ容疑者がマンチェスターで誕生する。マンチェスターには多くのリビア人亡命者が暮らしており、イギリスでは最も大きなリビア人コミュニティが形成されていた。アベディ容疑者の父親と弟はリビアのトリポリで暮らしており、24日にリビアの治安部隊は2人を拘束している。 マンチェスターの自爆テロでは、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出したが、真偽は定かではない。アベディ容疑者は事件前にリビアに滞在しており、事件発生の4日前にトルコからドイツのデュッセルドルフを経由してイギリスに戻っていた。トルコ滞在中にシリアに渡航していた可能性もある。