「チャレンジとギャンブルは違う」黒田剛は、どんな時に、どういう風にリスクをとれと話しているのか【町田快進撃の秘密⑦】
常勝軍団、青森山田高校からFC町田ゼルビアの監督に転じ、わずか1年でJ2からJ1に昇格、そして2024年J1での大躍進させた名将、黒田剛監督。著書『勝つ、ではなく、負けない。』の刊行記念トークイベントで太田宏介氏と対談した連載7回目。 【写真】トークイベントの様子
「もう一度応援してもらえるチームに」という想いで奮起
寄せられた質問のひとつが、J1~J3まで全60チームの頂点を決める「2024年JリーグYBCルヴァンカップ」プライムラウンド準々決勝について。FC町田ゼルビアは、アルビレックス新潟と対戦。9月4日に行われたアウェー戦では0-5で敗戦、トークイベント当日の9月8日、ホームで行われた試合は2-0で快勝したものの、得失点差で惜しくも準決勝進出を逃した。 質問者 昨日は、心を揺さぶられる、素晴らしい試合を見せていただきました。だからこそ、1回戦目の、あの屈辱的というか、悔しい敗戦の後、黒田監督が選手たちにどんな話をしていたのかが気になっています。 黒田 ありがとうございます。まず、こういう質問があったということ、すごく良い試合をしたら、サポーターのみなさんもそれを感じ取ってくださるということを選手たちに伝えたいです。 (どちらの試合も)同じトレーニングをしてきて、我々も同じことを落とし込んでいたつもりではありますが、やっぱり想いがなければ、こんなにも違うサッカーになってしまうんだということを実感し、我々にとってすごく良い勉強になりました。何か邪念が入っていたり、他のことに気を取られて、トレーニングしてきたことが散漫になり、集中できないということで、これほどパフォーマンスに差が出てしまう。0-5という屈辱を、選手たちがどう捉えるかによって、次の一歩に繋がるんだという……。 あの日(9月4日)、現地に150名のサポーターに来ていただいて、「オレたちは負けないぞ」「ずっと応援し続ける」という声を聞きました。あの声に、(選手たちが)何も感じないような、そんな心無いマネジメントはしてこなかったと、私は思っているんですよね。 だから今日の試合は、ここで奮起し、ずっと勝てなかった新潟(リーグ戦は1敗1分)を一掃してやるんだ、無失点で勝つんだというね。今まで応援してくれた、でも今、「この先ゼルビアは大丈夫なのか」という不安を感じているサポーターに、もう一度希望を持ってもらうためには、こういう試合をしなきゃダメなんだという想いを、成功するか失敗するかわからないなんてそんなことじゃない、とにかく“想い”をプレーで見せてくれと、伝えました。 みんなの心がひとつになって、トレーニングの時から頑張ってくれて、それで昨日のあの試合になったわけですが、やっぱりそれは、「サポーターにもう一度応援してもらえるチームになろう」という想いが、選手たちの心に火をつけたんじゃないかと思います。