「チャレンジとギャンブルは違う」黒田剛は、どんな時に、どういう風にリスクをとれと話しているのか【町田快進撃の秘密⑦】
チャレンジはしてもギャンブルはしない
次の質問は、「リスクのとりかた」について。 質問者 黒田監督のこれまでのインタビュー記事を見て思うのは、リスクは排除して確実性をとることを重視されているということ。ただ、サッカーはチャレンジすることも必要なスポーツなので、どんな時に、どういう風にリスクをとりなさいと、選手たちに話しているのかを知りたいです。 黒田 そうですね。まず、選手たちには、リスクとはなんぞやという概念から話していかなくてはいけないと思っています。 よく言うのは、ギャンブルとチャレンジの違いを見極めろということ。チャレンジとは、みんなが共有し理解しているもの。だから、たとえミスが起こったとしても、みんなでカバーができる。それに対してギャンブルとは、自分本位で何かをしてしまって、誰もカバーできず、失点につながってしまう。まずこの大きな違いを知ることですね。 ギャンブルではなく、チャレンジであれば、いくらでもしろと思っています。その代わり、みんなで共有したことをチームとしてやっていく。そのためには、自分勝手(な振る舞い)とかそういうものは排除していかないと。 例え話としてするのが、みんなから1万円を集めてパチンコに行ったとしても、みんなが、「お前はツキがあるから、これで勝負してきてくれ!」と期待されてやったのなら、負けて帰ってきても、誰もが笑って文句は言わないけれど、断りなく、勝手にパチンコに行って負けてきて、みんなから1万円回収したい、なんて言っても誰も許さないという話。 つまり、「自分でいいと思ったことをやってみろ。オレたちがいるから大丈夫だぞ」と、みんなが送り出したのなら、たとえ失敗したとしても、それはチャレンジ。で、チャレンジは必ず根拠があるから、ミスしたとしても、「次はこうやったらうまくいく」と、その先につなげることができる。でも、ギャンブルは、その人が自分勝手な発想でやっているものだから、誰も救えないし、次も同じ失敗を繰り返すことになるかもしれない。 だから、チャレンジはいいけれど、ギャンブルはいけないよねと、いつも選手には話しています。 ※8回目に続く。 黒田剛/Go Kuroda 1970年生まれ。大阪体育大学体育学部卒業後、一般企業勤務等を経て、1994年、青森山田高校のコーチとなり、翌年教員、そして監督に就任。以降、全国高校サッカー選手権26回連続出場、 同大会を含む計7回の日本一という偉業を達成する。2023年、FC町田ゼルビア社長、藤田晋氏に請われ、同チームの監督に就任。2023シーズンの優勝、J1昇格に導く。 太田宏介/Kosuke Ota 1987年東京都生まれ。ジュニアユース年代をFC町田(現・FC町田ゼルビアジュニアユース)で過ごし、2006年、横浜FCでプロデビュー。その後、オランダのSBVフィテッセやFC東京など国内外のチームを経て、2022年、FC町田ゼルビアに加入。2023年のJ1昇格に貢献し、現役を引退。現在、チームのアンバサダーとして宣伝担当を担い、解説やサッカー教室など幅広く活動する。
TEXT=村上早苗