「日本の球団はドラフト1位でも行きませんと」偏差値71の名門高の153km・45発“化け物”二刀流・森井翔太郎はなぜ直接アメリカを目指すのか
渡米して見えたビジョン
ただ、9月上旬に家族で渡米し、メジャー、1Aの試合を自らの目で見たことで、状況が一変した。メジャーリーガーになるという最終目標を再確認し、そのためにはマイナーから這い上がっていくことが一番の近道だという思いに至った。 「試合を見ながら、米国の生活がどういう風になっていくのかなとイメージして、『ここでやっていくんだ』という明確なビジョンができました。自分は結構適当というか、そこまでカッチリしているタイプではないので、米国のフランクな感じがあっている部分はあるのかなと思いました」 6日間の視察から帰国後、正式に米球界挑戦を表明した。MLB球団と接触する場合も、プロ志望届の提出が必要で、森井も渡米前に提出済み。ただ、花巻東時代に米球界入りを希望した大谷翔平を日本ハムが強行指名したように、NPB球団は本人の意思に関わらず、ドラフトで名前を挙げることができる。 そこで、田中監督は、森井本人や家族、学校長らの署名を入れ、NPB12球団に指名回避の要望書を送付。米国行きの夢を後押しした。
たとえ1位指名でも
「日本の球団には、1位指名されても行きませんとお伝えしました。どこかの球団が指名するんじゃないかというのはギリギリまでありましたが、最後は森井本人の意思を尊重してくれました」 ドラフトでは、最後まで森井の名が呼ばれることはなかった。当日は試験期間中で、テレビを観ることはなく、勉強に没頭していたという。「みんな受験モードで、自分の成績は最近落ちてきている」というが、それまでは学年で中位をキープしており、難関私大も十分狙えるレベルにあった。 「スカウトの方とも何回も話をして、自分の中で揺るがない意思を伝えてきました。なので、指名されることへの不安とかはあまりなかったですね」
交渉も自分たちで
今は来年1月中旬頃の本契約に向け、球団の絞り込み作業も最終段階に入っている。当面は代理人を立てず、田中監督と母・純子さんが窓口となり、交渉を進めているというのも珍しいケースだ。契約後に渡米してキャンプに合流。卒業式で一時帰国した後、再渡米して本格的にメジャー挑戦の戦いが始まる。 「まずは二刀流をやりたいという思いが強くて、それで活躍できたらいいですけど、向き不向きもあると思います。例えば投手がメジャーレベルで、打者がそうではなかったら、自分は投手でメジャーに行くことを選びます。マイナーでもいいから二刀流を続けるということはないですね」
「自分は普通のことをするだけ」
NPB球団を経ずにメジャーまで辿り着いた日本人選手は、マック鈴木、多田野数人、田澤純一の投手3人のみ。ましてやルーキーリーグからの挑戦は茨の道のりだ。 「逆に、マイナーを経験しないでメジャーに昇格することが異例で、自分は向こうでは普通のことをするだけだと思っています。もちろん、厳しい環境になるというのは重々承知しているので、自分のできることを最大限やっていきたいなと思っています」 米国で幼い頃からの夢を叶えるべく、森井は覚悟を持って海を渡る。
(「甲子園の風」内田勝治 = 文)
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