「会社員は退職金があって羨ましい」と嘆く“ひとり社長”必見…節税しながら退職金を自分で準備できる「見逃せない制度」とは【税理士が解説】
会社に所属せず、ひとりで働いている人には退職金がありません。しかし、そういった人のために退職金の代わりになるお得な制度が存在するのをご存じでしょうか。それが「小規模企業共済」です。本記事では、『【超完全版】マンガでわかる 手取り倍増!ひとり社長の世界一ゆるい節税』(KADOKAWA)より一部抜粋・編集して、著者のはたけ氏・なちぼぅ★氏が、ひとり社長だったらぜひ活用を検討したい、小規模企業共済の仕組みについて詳しく解説します。 【早見表】年収別「会社員の手取り額」
Q.ひとり社長が退職金の準備のために使える制度はある?
A.小規模企業共済で節税しながら退職金を準備 ・掛金は年84万円まで控除対象 ・退職金または年金として受け取る ・受け取り時の控除も大きい
節税しながら退職金を準備できる
税金に関する法律や制度には、ひとり社長の事業を成長させたり、引退後に向けた資産形成を支援したりするものが数多くあります。また、その中には節税効果がある制度もあります。 その1つが「小規模企業共済」です。小規模企業共済は、その名の通り小規模な事業者(原則として個人事業主および従業員数20人以下の会社の役員)を対象としています。また、商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)、弁護士法人、税理士法人等の士業法人(従業員数5人まで)が加入の要件となっています。 小規模企業共済はこうした小規模事業者の退職後の生活の安定を図るために設けられた退職金制度です。ひとり社長は一般企業に勤める人と比べて社会保障の恩恵を受けにくいため、小規模企業共済が経営者の退職金準備や資産形成の手段として機能することにより、そのような制度上の不備を補てんしています。 制度の仕組みとしては、ひとり社長が月々1,000円~7万円の掛金を設定(500円刻みで設定)し、退職時に共済金を退職金や年金として受け取るものになっています。
掛金が全額所得控除になり受け取る際の控除も大きい
節税メリットを見ると、まず掛金は所得税と住民税の控除の対象にできます。ひとり社長が自分の手取りから出した掛金は小規模企業共済等掛金控除として社会保険料控除や生命保険料控除などと同じ所得控除になり、所得税と住民税が少なくなります[図表1]。 生命保険料は新生命保険料の場合、年80,001円以上かけても4万円の控除が上限(住民税の上限は2.8万円)ですが、小規模企業共済は掛金全額、つまり上限の月7万円を掛金とした場合は年間で最大84万円が控除できます。 また、共済金の受け取りは一括、分割、一括と分割の併用を選択でき、一括で受け取る場合は退職所得の扱いとなります。退職所得は控除が大きく、例えば、勤続年数が20年超であれば、800万円と20年を超えた年数×70万円の控除が受けられます。 さらに、退職金から控除を引いた金額を半分にした金額が課税対象になるため、数千万円の退職金にならない限り税金がかかることはほとんどありません。 分割で受け取る場合は年金のように公的年金等の雑所得となり、やはり大きな控除が受けられます。 ▲退職所得の金額 (収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額 ▲退職所得控除額の計算 勤続年数(=A)が20年以下 40万円×A(80万円に満たない場合には80万円) 勤続年数(=A)が20年超 800万円+70万円×(A-20年) →分割公的年金等の雑所得として公的年金等控除が受けられる