ワンちゃんやネコちゃんの歯石除去、歯周ポケット治療は麻酔ナシでできる可能性が【ワンニャンのSOS】
【ワンニャンのSOS】#66 ワンちゃんもネコちゃんも、シニアになると歯のトラブルが増えます。先日、ウチのスタッフが友人から相談を受けたのも、歯周病に関するものでした。ザックリと内容をまとめてみると、以下の通りです。 【写真】加賀まりこさんと猫の「宙(そら)」 との愛の日々 虹の橋を渡った18年来の“我が子” ワンちゃんは15歳。ヒトだと80歳くらいの高齢です。歯石の付着がひどく、細菌が増殖。咳やくしゃみをすると痛がって鳴くそうです。それで動物病院を受診すると、その獣医師の説明は麻酔で抜歯する手術の一択でした。痛みの原因は歯周病によって増殖した細菌と炎症によるもので、これを放置すると、衰弱死する、というもの。もっともらしいことを言ってはいますが、私にはちょっと理解できません。 別の12歳のワンちゃんは、トリミングサロンを利用していたところ、歯が欠けていることを指摘され、歯科に強い動物病院を紹介されたそうです。 そこでも、最悪の場合の危険性をあおるばかりで、治療は麻酔下での抜歯手術一択。予定される麻酔は3時間だったといいます。これもヒトでは70歳ですから、いかがなものか。 後者の例では、白内障もあり視野が狭く、怖がりな性格。口の中を診察しようとすると、かなり攻撃的になります。このケースでは、きちんと治療ができず麻酔が必要ですが、それでも3時間は長い。30分程度で済ますことが可能です。 麻酔が必要かどうかは事前に検査で調べます。その上でOKという判断だと思いますが、シニアのワンちゃんやネコちゃんの治療には、麻酔をしない方がベターだと思います。どうしても必要なら、なるべく短い方法を検討すべきでしょう。 当院では、麻酔が効いて痛みの管理ができる状態でも、自発呼吸を維持しながら手術するのを基本としています。麻酔が深すぎると、自発呼吸が抑制されるリスクがあるためです。 最新の麻酔器は非常に便利な支援機能がついていて、麻酔チューブにつけられた呼気センサーが一定時間呼吸を関知しないと、自動的に人工呼吸に切り替えることができます。そのまま人工呼吸を維持できるし、麻酔量の調節で再び自発呼吸に戻すこともできます。手術中の麻酔と呼吸の管理が細かくできてしまうのです。 麻酔下での手術があちこちで勧められるのは、こうした機械のレベルアップがかなり影響していると思います。機械のレベルアップは喜ばしいことですが、長時間の麻酔による悪影響は変わりません。 コミュニケーションが取れているワンちゃんやネコちゃんなら麻酔ナシで歯石を除去できます。歯周ポケットの治療も可能です。その可能性があることは、ぜひ飼い主さんは知っておいてほしいと思います。 (カーター動物病院・片岡重明院長)