古代エジプト人もデスクワークは辛かった!? 書記の骨に「職業病」の痕を発見
裏付けとなる証拠は
米テキサス州立大学の生物人類学者ダニー・ウェスコット氏は、分析されたアブシールの骨は少なく、対照群と比べて骨の変形の増加もわずかだったと指摘する。 つまり、アブシールの骨に見られたような特徴は、古代エジプトのほかの場所の書記には見られない可能性がある。 さらにウェスコット氏は、あごの傷がイグサのペンをかじったことによるものかもしれないという仮説に関して、歯が非対称にすり減っているなどの裏付けとなる証拠が見られないことも懸念する。 「この研究は、骨から当時の生活を再現する可能性を示すものですが、同時に総合的なアプローチの必要性を示してもいます」 それを示せる日が来るかもしれない。ブルクナー・ハベルコワ氏は、まだこの研究は始まったばかりであり、ギザの墓やサッカラの集団墓地など、ほかの場所に埋葬された古代エジプトの書記についても調査したいと述べている。 「発表した論文は、書記の身体活動についての最初の洞察にすぎません。次は仮説の裏付けです」
文=Tom Metcalfe/訳=鈴木和博