新NISAはオルカンかS&P500を選んでおけばOKなのか 積み立て投資の3つの弱点とは
もちろん、積み立て投資で得られるスキルもあります。しかし、それはあくまで「積み立て投資のスキル」であって、勝てる投資家になれるスキルとはまったく別ものです。積み立て投資で得られるスキルは、たとえば次のようなものです。 ・継続力 ・がまん強さ こうしたスキルが、まったく意味のないものとは言いません。「二刀流」で運用するなら、身につけておくべきでしょう。ただし、何度もいいますが、これだけでは勝てる投資家にはなれません。 ■積み立て投資の弱点(2) インデックスのスピード以上に資産が増えない 積み立て投資のいいところとして、「ローリスクである」という面も挙げられます。インデックスファンドは指数に連動するので、オルカンなら世界が成長していく限り、S&P500なら米国が成長していく限り、資産は増えていくことになります。 もちろん、投資であることに変わりないので、「ノーリスク」はありえません。コロナショックのときのように、思わぬ理由で世界経済がマイナスに振れることもあるでしょう。しかし、それは一時的なものです。長期で見れば、世界も米国も成長し続けています。倒産で紙切れになってしまう個別株投資と比べれば、ローリスクであることは間違いないでしょう。 絶対に損をしたくないと考える人には、ぴったりの投資法かもしれません。しかし、ローリスクということは、裏を返せば「ローリターン」であるということを忘れてはいけません。 これは、相場の世界では絶対的なセオリーです。ローリスクな金融商品は、一部の超富裕層をのぞいて基本的にはローリターンしか見込めないのです。もし、「ローリスク・ハイリターン」を謳う商品があったら、それは詐欺だと思ったほうがいいでしょう。 私がおすすめする戦略は、ローリスクでもハイリスクでもない、「ミドルリスク・ミドルリターン」です。
オルカンやS&P500などのインデックスファンドは、当然ですが、指数以上のスピードで資産が増えることはありません。市場の平均しか取れない、ということです。利回りでいえば、オルカンなら6%、S&P500なら8%といったところでしょうか。もちろん、それで十分だという人もいるでしょう。でも、それ以上にリターンを得ようと思うなら、自分のスキルを高めて平均以上を取っていくしかありません。 ■積み立て投資の弱点(3) 長期間の退屈さに人は耐えられない 意外かもしれませんが、これが積み立て投資のもっとも致命的な弱点だと思います。 積み立て投資は、基本的に「苦行」だと私は思っています。何十年もの間、他の投資には目もくれず、同じことをコツコツくり返す。どんなことがあってもめげずに継続する。未来を信じて、毎月お金が引き落とされることに耐える。 積み立て投資は、みなさんが想像している以上に地味な作業です。この退屈さに耐えられる人がどれほどいるのでしょうか。 「◯歳の人が◯年間、月◯万円を積み立てたらこうなる」 上のようなシミュレーションのグラフを、目にしたことがあると思います。しかし、本当にシミュレーションどおりにできる人が、どれだけいるのでしょうか。私は疑問に感じています。そもそも人間は、そんなふうにできていないと思います。 たとえば今後、バブル期のような日本株ブームが到来するかもしれません。日経平均株価が4万円を超え、誰もが日本株の恩恵に酔いしれる。そんな場面が訪れるかもしれません。そんなときでも、インデックスファンドの積み立てをコツコツ続けられるでしょうか。「億り人」が続々と誕生するのを横目にしながら、耐えることができるでしょうか。 そして長い人生、途中で「飽きる」ことはないのでしょうか。他のことにチャレンジしてみたくならないでしょうか。それは非常にもったいないことですが、何十年という長期にわたって積み立て投資を継続することは、みなさんが想像している以上に難しいものです。ある意味、「つみたて力」とでもいうべき、特別な能力が必要です。 そんな「苦行」に、あなたは耐えられますか? 少なくとも、私は耐えられそうにありません。 ※投資は個々人の判断と責任において行うのが原則です。
上岡正明