「親友がいない」「寂しい」と嘆いている人へ、美輪明宏さん「今の世の中で“孤独病”から逃れるには」
ですから、獰猛な動物が吠えているとお思いになればラクになります。ユーモアは人生の必需品です。それがあれば、つらいことをどうにでも切り抜けられます。 Q 一緒にどこかに行ってくれる人も、愚痴を話せる人もいない。親友がいない…… 今の世の中、こういう人ばっかり。みんな、寄りかかれる人を探し求めている。「孤独病」です。愚痴を聞いて慰めてくれる、悩みを掃除機のように吸い取ってくれる、そんな都合のいい相手を求めているだけなのです。
だけど、自分に寄りかかられるのは嫌。重いの。お互いにそういう人なんだから、そりゃうまくいきっこないですよ。 そもそも親友と呼べる人は、一生にひとりかふたり現れればいいほうです。 間違っても、無理に友達をたくさんつくろうとしないこと。友達が多ければ多いほど、もめ事や悩み事も人数分だけ増えるものです。友達がいなければ、孤独で寂しく感じることはあるかもしれませんが、余計なゴタゴタに巻き込まれることも、裏切られることもありませんし、逆にこちらも裏切る罪を犯さなくて済むのです。
どちらをとるかであって、親友がいないから自分はダメだということではありません。 ■「生まれてこの方、一番つらかったこと」を思い出す 生きている限り、苦労は次から次へと一生ついてきます。でも、今までいろんなことがあったけれど、それらを踏み越えてきたからこそ、今、存在していらっしゃるわけでしょう。 ですから、いい方法を教えます。これからは何かあるたびに鏡を見ることです。鏡を見て、「生まれてこの方、一番つらかったこと」を思い出すんです。
「ああ、あのときは本当に、死のうかと思ったほどつらかったな」 そう思って自分の姿を見ると、そこには紛れもなく、生命力に溢れて生き抜いてきた自分の姿が映っているはずです。「でも、生きてきたじゃないか。あれを乗り越えてきたということは、私に力があったからじゃないか」という証拠が残っているんです。 こんな世の中、おのれを信じるということが一番大事なのです。どんな困難が降りかかっても、「どうせ命までは取られやしない、今まで生きてこられたんだから。今度もできないことはない」と思うことです。
今まで生きてきたんだもの、これから先だって生きられないことはないのです。
美輪 明宏 :歌手、俳優、演出家