『降り積もれ孤独な死よ』血の呪い越えた成田凌と萩原利久の兄弟愛 吉川愛が握る秘密とは
残された謎を整理
残された謎を整理したい。灰川邸で冴木や鈴木たちを襲った顔に傷がある男の正体。花音を階段から突き落とした犯人は誰なのか。家出少女の美来(水野響心)は手首にリッカのマークのタトゥーがあった。偶然でなければ、灰川邸の関係者が美来の失踪にも関わっていると考えられる。浮上するのはある人物の存在だ。その人物こそ、冴木の前から姿を消した花音だった。 花音にマヤを殺害する動機があるとすれば、自分が階段から突き落とされた時にマヤにアリバイがなかったこと。これだけでは根拠が薄いが、花音が何かを隠していることは、これまでの言動や発する雰囲気からも察せられたことである。数々の優等生的な発言は、ただ単に感情の起伏が乏しいだけではなく、そこに何らかの意図、あるいは知っていながら見ないふりをしていたものが含まれていると思われる。冴木の前で何ごともないように振る舞うことで、破綻のなさがかえって怪しさを醸し出していた。 灰川が残した日記の最後のページに書かれていたこと。リッカのマークの中心にあった日記には重大な意味が込められているのだろう。そこに「不都合な事実」はあるのか? 灰川と鈴木が死んだことで、残された人々にとって灰川邸事件がどんな意味を持っていたかが明らかになるだろう。ところで、サスペンスにキャラクターの個人的な感情を重ねるのが本作の魅力である。冴木と花音の間にロマンチックな関係の兆しもあった中で、立場を変えた二人がどんな感情をつむいでいくか注目したい。
石河コウヘイ