かなりの重労働…植林の下準備“地ごしらえ” 林業担い手育成の研修で悪戦苦闘
日田の林業の担い手を育成する4回シリーズの「ひた森勉強会」。2回目となる現地研修が9日、大分県日田市前津江町の山林であり、8人が受講した。記者も前回に引き続いて参加。急傾斜地での再造林に向けた下準備や、植林の方法を学んだ。 【動画】ベテランによる素早い植林の様子 勉強会は、林業関係者でつくる「ひた森の担い手づくり協議会」(諌本憲司会長)が開いている。今回の研修会場は、江戸時代から続く日田市の林家、マルマタ林業の所有地だ。同社取締役の合原万貴さん(44)も指導役を務めている。 伐採が終わった山の斜面は、下草や枯れ枝が残り、すぐには植林できない。 植林の下準備が「地ごしらえ」で、さまざまなやり方がある。日田地方で主流なのは、刈った下草や枯れ枝を集め、山の斜面に等間隔に棚を作る「棚積み地ごしらえ」だという。 作った棚は土壌の流失を防ぐほか、植林時の足場にもなる。間伐の際にも使うため、長持ちするよう丈夫に作る必要がある。 1ヘクタール当たり2千本のスギを植えるという。合原さんによると、昔は3千本植えていたが、手入れのしやすさやコストを考えて現在の本数になった。 植える間隔は約5平方メートルに1本。長さ2・2メートルの竹で測りながら植える場所を決め、棚もそれに合わせて積み上げていく。 長い柄の付いた鎌で下刈りしていくが、不安定な斜面での作業はかなりの重労働だ。涼しい日だったが15分もすると汗が噴き出てきた。夏場は午前5時に始め、午後2時には終わるようにしているという。 約2時間の作業で地ごしらえを終えた。昼食を挟んで植林作業に入る。 今回植えるのは、品種改良で花粉の少ない「藤津14号」。戦後間もなく植林されたスギやヒノキで花粉症の人が増えた。このため花粉の少ない品種への植え替えが進んでいるそうだ。 日田市森林組合・森林整備センターの黒木利典所長(56)が、先のとがった専用の道具で、ポット苗の植え方を指導する。苗が垂直に立っているか、手で引っ張っても抜けないかがポイントという。 初心者は一つの苗を植えるのに1分以上かかる。林業歴30年超の森林組合のベテラン関屋修さん(64)は、くわを使い15秒ほどで植えていく。受講生が植えた苗はマルマタ林業の合原さんが1本ずつチェック。将来の大事な商品のため真剣だ。とりあえず私も「合格」判定を得た。 約120本を植えた後、シカの食害を防ぐシェルターと防護ネットの張り方を教えてもらった。ネットの支柱は地表に対して垂直に差し込むなど、いろいろな「こつ」がある。 受講生の阿部寛さん(35)=杵築市=は、森林の受託管理や木材流通を手がける企業メジャーフォレストリーの副社長。林業労働者の不足は深刻な問題で、解決のヒントを見つけるために学んでいる。「作業の手順は知っていたが、想像以上の重労働だった」と阿部さん。ベテランの指導を受け「知識と経験のあるリーダーがいれば、未経験者でも十分働けることが分かった。リーダー養成の仕組みを考えたい」と手応えを感じていた。 (床波昌雄)