自民党総裁選は「政治家個人をみるよい機会」ジャーナリストが解説
岸田さんが出馬を見送ったのも、岸田さんが首相のままでは選挙が戦えない、要は自分が選挙で落ちてしまうとか、裏金事件で多くが処分を受けた派閥を中心に「何でトップである総裁が責任を取らないのか」といった恨みに似た強い批判が出たからと言われていますが、これは政治家個人の事情であって、「いま直面する国内問題、ウクライナやパレスチナなどの外交問題は岸田さんでは対処できず、もっと適切に対処できる人に変えなければならない」という天下国家からみた理由からではないのです。 ■政策に対する評価より「選挙の顔」かどうか 実際、岸田さんの評判はさんざんのように見えますが、例えばアメリカでは、日本の防衛力を強化することで日米同盟を深化させ、さらに日韓関係も改善させたなどと高い評価を得ています。この内容には賛否があるのでそのまま評価することはできませんが、それにしてもこうした評価を前提に、もっとよい人を選ぼうという動きが総裁選にあるようにはとてもみえません。 いま名前が挙がっている人をみてみると、元環境大臣の小泉進次郎さん、前経済安保担当大臣の小林鷹之さんが40歳代の若手、外務大臣の上川陽子さん、元総務大臣の野田聖子さん、元経済安保担当大臣の高市早苗さんといった閣僚や閣僚経験のある女性3人が特徴的でしょう。若さと清新さ、そして初の女性首相というのは重要な要素です。さらに常連の石破茂さん、河野太郎さん、幹事長の茂木敏充さん、官房長官の林芳正さんという党内きっての実力者もいます。 ただ、先ほど述べたとおりこうした人たちを、「選挙の顔」としか見ていない人たちがいます。若さや女性であることは重要な要素ではありますが、それを国民の受けの良さや人気にのみ注目して「自分の選挙に有利だから」とその人を推すことはどうかと思います。 いま国内では、少子高齢化や気候変動に伴う豪雨や地震などの自然災害、不安定な経済状況、国外に目を移せば、あのトランプ氏の再選が注目されるアメリカ大統領選やウクライナやイスラエル・パレスチナでの軍事紛争、中国の動きなど、さまざまな問題があります。こうしたことに、どう取り組んでいくのかについて、総裁選で手を挙げた政治家は首相候補として、明確に語っていく責任があります。政治家としての責任です。