NASAの商用火星探査ミッション再開に是非を問う声
人類は火星への有人飛行という夢を追い求め続ける中、その是非を問いただすべき時かもしれません。 今日の宇宙画像 オーストラリア・カーティン大学のSteven Tingay教授(電波天文学)は、同国のメディアサイトThe Conversationに、「アメリカ航空宇宙局(NASA)は商用火星探査ミッションを追求しているが、人類は今なお火星に赴くことを望むのか?」という題名の論考を寄稿しました。
50を数える火星ミッション
ソビエト連邦(現ロシア)が1960年に「マルス1960A」ミッションで火星へのフライバイを試みて以降、人類は50もの火星ミッションを開始しました。NASAが1965年7月に「マリナー」4号で火星へのフライバイに成功したミッションを含め、31のミッションに成功しています。こうした火星探査ミッションは主に、大気、軌道、地質などに関する情報を地球に送り返すことを目的としており、「マリナー」9号による液体が地表を侵食した痕跡の発見(1971年)、探査車「オポチュニティ」による幅が3cmほどの球体状の形成物「ブルーベリー」の発見(2004年)、その形成物がかつて火星に存在した水によって生み出された可能性など、人々の関心を引く発見をもたらしました。 その一方で、近年では欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「スキャパレリ」の墜落(2016年)のように、ミッションが失敗に終わったケースもあります。火星探査には1ミッションあたり10億米ドルを超える莫大な予算がかかり、世界の主要な宇宙機関はこれまでに500億米ドル以上を投資してきたといいます。人類を火星に送るためには、さらなる技術向上と莫大な投資が必要です。
NASAジェット推進研究所(JPL)が2024年1月26日にパートナー募集を公表した「Exploring Mars Together」は、Relativity SpaceとImpulse Spaceによる民間火星探査ミッションに続く火星ミッションです。両企業は、2024年に火星に宇宙船を送る民間火星探査ミッションの計画を2022年に発表し、NASAと資金援助を伴わない宇宙法協定(SAA: Space Act Agreement)を締結しました。しかし、2023年3月に3Dプリンタで製造された再利用可能な「Terran R」ロケットが軌道投入に失敗したことで、ミッションは2026年まで延期されました。今回の「Exploring Mars Together」ミッションでは、50kg以下の小型ペイロードの運搬(「相乗り」(ホステッド・ペイロード)オプションの余地あり)や、1250kgほどの大型ペイロードを火星周回軌道へ運搬(相乗りオプションの余地あり)、火星での撮像サービス、および火星と地球間の通信中継サービスへの入札が可能になります。