『響け!ユーフォニアム3』はなぜ傑作になったのか “原作改変問題”を考える重要な一作に
許せない感情も大事
原作からの大幅な変更によってドラマに濃密さを与えたことを絶賛する人もいれば、主人公がソリに選ばれなかった展開に憤っている人もいる。筆者はこの改変は見事だと考えているが、怒っている人にもその感情を大事にしてほしいとも思う。 この展開を認められないと感じた人は、「悔しい」のだと思う。久美子たちの3年間を見てきた人なら誰だってそういう感情は抱く。そしてその感情は登場人物によっても代弁されている(主に久石奏が代弁している)。部員にも様々な反応があったように視聴者にも様々な反応があっていい。 キャラクターの気持ちとシンクロできたことは物語に没入できていたということで、それはとても価値あることだ。でも、久美子のように「死ぬほど悔しい」気持ちと「これを誇れる自分でありたい」という気持ちは両立できるので、どちらの気持ちにフォーカスするのかでも心の持ちようは変わると思う。 ただ、少なくともひとつ言えるのは、絶賛にせよ、批判にせよ、これだけ強い反応を呼び起こせること自体が優れた作品の証左でもあるということだ。平凡な作品なら、呆れられるだけだっただろう。 原作者の武田綾乃が言うように、原作小説もアニメにも「努力は報われる、ただしそれは本人が望む形とは限らない(※)」ことが詰まった作品だった。原作者とアニメ制作陣の協力関係が良好で互いに刺激をしあえたからこそ、どちらも傑作になったのだと思う。「原作は原作、アニメはアニメ」と、それぞれの良さを認められることを誇りに思えるファンでありたいと思う。 ■参照 ※ https://x.com/ayanotakeda/status/814175101084020736
杉本穂高