『響け!ユーフォニアム3』はなぜ傑作になったのか “原作改変問題”を考える重要な一作に
京アニは久美子と麗奈の特別を強化した
さて、『響け!ユーフォニアム3』は原作から何を変えたのか。これまでのシリーズでも細かい変更は多々あった作品だが、話題となった第12話「さいごのソリスト」で、京都アニメーションは、ユーフォニアムのソリストを勝ち取るキャラクターを久美子から黒江真由に変更した。主人公がある意味、敗北するという結末へと変更したのだ。 ただいたずらに衝撃の結末を作りたくて変更したわけではないだろう。シリーズ第1期から第3期までを総合して、久美子と高坂麗奈の関係の濃密さに決着をつけるためには、二人には同じような傷と同じ共犯関係が必要だと考えたのではないか。 『響け!ユーフォニアム』シリーズは、麗奈の「死ぬほど悔しい」というセリフで始まる物語だ。当初は熱くなれなかった久美子が麗奈に触発されて「悔しい」感情を持ち始めていくのが第1期で描かれている。だが、一年時から主力の奏者としてオーディションにも選ばれ続けた彼女は、コンクールで負けても悔しくて泣くということはなかった。二年時の関西大会敗北でも久美子は泣いていない。むしろ「死ぬほど悔しい」と言って涙を流していたのは後輩の久石奏の方だった。 麗奈が味わった「死ぬほど悔しい」を最後の最後に久美子が味わうこと。これは麗奈と同じ感情を持つということであり、それがあるいみ麗奈の決断によってもたらされること、そして、それを知るのは久美子と麗奈の二人だけであるということ。久美子がソリを逃すという改変によって、二人だけの「特別な関係」はさらに強固になっている。 久美子と真由の再オーディションは、第1期の麗奈と中世古香織の再オーディションのリフレインだ。あの時、久美子と麗奈は実力で選ばれるのが北宇治だという道を歩んだ「共犯者」だ。それが今度は自分に跳ね返ってきた。そして、香織と同じように自ら、「これが北宇治のベストメンバー」と宣言した。ブレずに決めた道を進むことで彼女は部長としての責任を見事に果たしたのだ。