「クリントン大統領」実現への課題 「米国vs.トランプ」の構図つくれるか
(2)「反トランプvs.反クリントン」
共和党ほどではないにせよ、民主党も党内結束という課題を抱える。党大会に出席した代議員によるクリントン氏への投票率は58%。2008年のオバマ大統領の72%、04年のジョン・ケリー氏の98%と比べても低い(トランプ氏の70%よりも低い)。逆に、サンダース氏への投票率は40%に達した。 米ピュー・リサーチセンターの最新の調査(7月25日発表)によると、サンダース支持者の90%は本選挙でクリントン氏に投票すると回答する一方、政治専門紙「ザ・ヒル」(7月14日付)はミレニアル世代(21世紀になって社会に出た10~30代の若年層)のサンダース支持者の48%が「緑の党」など「第3の勢力」に投票するとしている。 民主党の政策綱領では最低賃金の時給15ドル(約1600円)への引き上げや、勤労者世帯の公立大学授業料の無償化など、サンダース氏の支持者の取り込みを狙ったが、党大会を見る限り、クリントン氏への嫌悪感は相当強く、クリントン支持を訴えるサンダース氏本人がブーイングされる始末だった。 唯一結束できるのは「反トランプ」という点であり、これは「反クリントン」という点で辛うじて結束できる共和党と同じだ。どちらも自軍の候補への支持よりも敵軍の候補への不支持によって結束し得る。つまり「クリントンvs.トランプ」ではなく、「反トランプvs反クリントン」という構図だ。相手陣営の切り崩しが今後の鍵となろう。 民主党としては、「リベラルvs.保守」という従来の構図よりも、トランプ氏を「悲観論者」「自己中心主義者」「破壊者」と定義することで、大統領(=最高司令官)としての資質や判断力、経験の欠如を、サンダース氏の支持者、共和党の穏健派、無党派層に訴える戦略を採るだろう。つまり「米国vsトランプ」という構図をつくり上げることだ。逆に、トランプ陣営としては「インサイダーvs変革者」という構図に持ち込みたいところだ。