主軸不在の危機にも動じず…選手層の厚さを見せつけた矢板中央が5発快勝で決勝へ!!:栃木
[11.9 選手権栃木県予選準決勝 矢板中央高 5-0 足利大附高 栃木県グリーンスタジアム] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 主力組に怪我人が続出し、ベストメンバーは組めなかった。しかし、選手層の厚さを見せつけ、相手を圧倒。危なげなく決勝進出を決めた。 9日、全国高校サッカー選手権の栃木県予選準決勝が行われ、過去4度の全国ベスト4経験を持つ矢板中央高は足利大附高と対戦。効果的にゴールを重ね、5-0で勝利を手にした。 準決勝を迎えるにあたり、矢板中央はメンバーの再編成を余儀なくされた。キャプテンのDF佐藤快風(3年)とともに最終ラインを牽引してきたDF小倉煌平(3年)が、試合4日前のトレーニング中に額を裂傷。サブに回ることを余儀なくされた。予選前に負傷したDF清水陽(3年)もベンチ外で、3バックの陣容を見直し。中央に佐藤を配し、左にDF山村瞳輝(3年)、右にDF永井健慎(2年)の並びで臨んだ。攻撃陣もMF山下魁心(3年)やMF外山瑛人(3年)らが怪我明けでサブとなり、攻守両面で不安を抱えた状態で準決勝を迎えた。 そうした状況下を跳ね返し、チームはアグレッシブなプレーを見せる。「相手の攻撃が想像以上に縦に速いし、守備もコンパクト。球際で勝負をしてくる」と序盤は足利大附に手を焼いたものの、徐々に主導権を掌握。今季から採用している3-1-4-2の攻撃的な布陣が機能し、自陣からボールを繋いでサイドから相手を押し込んだ。アンカーのMF田中晴喜(3年)もビルドアップに加わるだけではなく、3列目から攻撃に参加。高い位置に顔を出し、積極的にチャンスに絡んだ。 すると、前半23分にスコアが動く。FKの二次攻撃からMF平野巧(2年)が左サイドからクロスを入れると、小倉の代役でスタートから起用された山村がゴール前で競り合う。相手DFが跳ね返したこぼれ球に田中がダイレクトで合わせ、先制点をもぎ取った。 以降も相手のカウンターに対応しつつ、テンポの良い仕掛けから好機を創出。追加点は奪えなかったものの、1-0で前半を折り返した。 後半に入っても運動量は落ちず、強度の高いプレーで相手を圧倒。8分には平野のFKに山村が頭で合わせて加点すると、20分には平野の左クロスから田中が鮮やかなドライブシュートを突き刺してリードをさらに広げる。直後の22分には、3列目から最前線に駆け上がっていた田中がハットトリックとなる一撃を見舞い、チーム4点目を記録。最終盤の40分には途中出場のFW朴大温(3年)が、GKが弾いたところを押し込み、ダメ押しとなる5点目を決めた。 怪我人続出のピンチを跳ね除け、2大会連続となる選手権出場に王手をかけた。選手層を拡充できた要因の一つに、22年度からAチームとBチームの垣根を取っ払い、約40人の大所帯でトップチームの活動をしている点が挙げられる。Aチームはプリンスリーグ関東1部、Bチームは県リーグ1部を戦っているが、コンディションや調子によって選手をスムーズに入れ替えられるようになった。選手の状態を把握しやすくなったのはもちろん、チーム内での競争を後押しする材料にもなっており、そうした取り組みが選手の底上げに結び付いている。高橋健二監督は言う。 「プリンスリーグ、県リーグ1部で戦うなかで、40人を一つにして戦えている。競争力も上がり、切磋琢磨しながらやれていると感じます。また、プリンスリーグと県リーグ1部を戦えている経験値は大きいし、共通理解や意思疎通がスムーズになった。矢板中央が目指すサッカーをみんなで共有して、同じ目標に向かって戦えている点も大きい」 実際に2点目を決めた山村はインターハイの本大会でもメンバー入りしていたが、プリンスリーグ関東1部では1試合しか出場していない。しかし、僅かな準備期間でもチームにアジャストし、身体を張った守りと得点力で準決勝の勝利に貢献した。 攻撃陣も充実しており、県リーグ1部でゴールを量産していたFW加藤神人(3年)が夏以降にレギュラーポジションを奪取。ベンチにも朴などが控え、誰がピッチに立ってもクオリティーが落ちないチームに仕上がった。 14度目の選手権出場まであと1勝。主力の不在を感じさせない戦いを見せた“栃木の雄”に死角はない。 (取材・文 松尾祐希)