考察『虎に翼』やっぱりとにかく伊藤沙莉がいい!
4月の放送開始から、私たちを惹きつけ続けるNHK連続テレビ小説『虎に翼』(月~土 朝8時~)。今月から、月刊レビュー(全4回予定)として、ドラマを愛するライター・釣木文恵がその魅力を考察します。
人間らしい主人公が人を救おうとするドラマ
もはや一から説明するまでもないほど高い注目を集めている朝ドラ『虎に翼』。日本で初めて法曹界に飛び込んだ実在の女性をモデルに、伊藤沙莉演じる主人公・猪爪寅子の生きざまを描いている。寅子が新しい日本国憲法の記事を読んで涙ぐむ第1話から、実際に法律に関わっている人やこれまで朝ドラの視聴習慣がなかった人などを巻き込み、多くの人々を毎日15分間テレビに釘付けにし続けている。 私たちをたびたび唸らせるのは、昭和初期の女性が置かれていた、そして今なお変わらない部分も大いにあるさまざまな境遇や扱われ方、女性が抱えるやるせなさややり過ごし方を丁寧にすくいあげ、描く脚本だ。 NHKの「朝ドラ100」のサイトには、『虎に翼』のあらすじがこう綴られている。 「彼女(主人公・寅子のこと)とその仲間たちは、政治でも経済でも解決できない、追い詰められた人々の半径5メートルの世界を見つめ、その苦境から救うため情熱を持って向き合っていきます」 今作の脚本を担当する吉田恵里香がドラマを通じてやろうとしていることは、まさにこの寅子の行動に重なるのではないか。生きづらい人々の「半径5メートルの世界を見つめ」て描き出すことで、直接救うことにはならなくとも、観る人にその存在を気づかせる。そんなことが、このドラマでは行われているような気がする。 人を救おうとする主人公を描くドラマ。だからといって、救おうとする側が常に正義というわけではない。寅子は高潔な志だけで突き進むわけではなく、無知ゆえの配慮のなさや傲慢さも描かれてきた。仲野太賀演じる佐田優三との結婚も最初は打算から始まったことだし、最新14週では恩師である穂高(小林薫)に対して怒りをあらわにしてしまったりもする。その人間らしい揺れこそが、ドラマへの信頼をより高めてくれる。