3カ月ぶり高水準の「米国債利回り」、大統領選後に予想される4つのシナリオ
4つのシナリオがもたらす結果
JPモルガン・チェースはそれぞれのシナリオが成立した際の10年物国債利回りを予想している。JPモルガンの試算では、シナリオ3(ハリス勝利、ねじれ議会)では10年債利回りに影響はなく、シナリオ1(トランプ勝利、ねじれ議会)では10ベーシスポイントの上昇、シナリオ4(ハリス勝利、両院で民主党が多数派)では20ベーシスポイントの上昇、そして、シナリオ2(トランプ勝利、両院で共和党が多数派)では40ベーシスポイントの上昇と予想した。 トランプが大統領選で勝利し、共和党が上下両院を押さえるというシナリオが成立すれば、10年債利回りは4.6%程度まで上昇すると予想されており、これは5月以来の水準となり、2008年から2022年までにつけたどの利回りよりも高い水準となる。 JPモルガン・チェースのストラテジストは、共和党が政権を奪取した場合の債券市場の反応が急な理由について、Responsible Federal Budget(CRFB)が発表した調査結果に言及した。同調査では、トランプの政策は減税などの影響により国家債務を7兆5000億ドル(約1152兆円)増やす結果となるとされており、一方のハリスは3兆5000億ドル(約537兆円)増加させると予想されている。 先述のチューダー・ジョーンズは、ハリスとトランプは「マルディ・グラ(ルイジアナ州などで盛んに開かれる祝祭)で参加者が大量に投げつけるビーズのように」、大規模な支出を必要とする減税と連邦プログラムを提案していると言い放った。 今月初めに発表された投資銀行のUBSによる分析によると共和党にせよ、民主党にせよ、どちらかの党が上下両院を押さえることは、そうでない場合よりも米国株にとって悪い材料となると指摘した。そして、トランプが提案する、中国からの輸入品に60%、その他の輸入品に10%の課税を課すという大規模な関税政策が成立するシナリオは株価にとってより悪い結果であるとも述べた。 米財務省によると、現在の米国の国家債務は35兆8000億ドル(約5500兆円)であり、トランプが大統領に就任する前の2016会計年度末に記録した19兆6000億ドル(約3011兆円)、ジョー・バイデンが大統領に就任する前の2020会計年度末の27兆ドル(約4150兆円)から増加している。米国債(米国財務省証券)は米国が政府のプログラムに資金を供給するためのツールとして機能しており、利回りの持続的な上昇は、増大する国家債務に対する投資家の怒りの高まりを反映している。債務を抱えすぎた企業への融資には高い金利が課せられるように、政府に対するこれらの「擬似融資」に対する金利も、政府が負債を積み重ねるにつれて高くなる。債券市場の低迷(利回りの上昇)は、ウォール街が景気後退懸念を払拭し、米国経済への自信を示すにつれて、株式市場への資金流入が増加していることを部分的に反映している。
Derek Saul