連立政権が崩壊したドイツは、もはや「末期症状」…!解任された財務大臣がショルツ首相に突き付けていた「最後通牒」
不自然なほど整っていた声明
つまり、自民党は何を主張しても、左派グループの社民党と緑の党に反対される。あまり自己主張すると、政治の妨害者として評判が落ちるし、かといって妥協ばかりしていると、期待を裏切られたとして支持者が離れる。 どちらに転んでもうまくいかず、本来の主張とは根本的に違うことばかり実践しているうちに、今では支持率が4%まで落ちてしまった。こうしてみると、自民党が現在の政権の中にいること自体に無理があったわけだ。 私にはリントナー氏の作戦は読めないが、ドイツでは5%条項というものがあり、5%未満の得票率では国会で議席を持てないから、自民党は来年の総選挙で生き残れるかどうかの瀬戸際にいる。なお、現状を見ても、ショルツ首相のカオス政権があと11ヵ月ももつかどうかは疑わしく、リントナー氏が真剣勝負に臨もうとしていることは確かだ。つまり、リントナー・ペーパーが、政府瓦解の“とどめの一突き”になる可能性は大いにあり得ると、私は見ている。 と、ここまで書いたのが11月5日。そして、翌日6日の夜9時15分、突然、「ショルツ首相がリントナー財相を解任」とのニュース速報。連立政権は本当に崩壊してしまった。 1時間後に行われたショルツ首相の声明は、突然にしてはかなり長く、不自然なほど整った文章だったが、内容は、最初から最後まで自分の擁護とリントナー氏に対する罵倒。しかも、「私はドイツの首相として」という言葉が、何度も繰り返されたところに、ショルツ氏の足掻きのようなものを感じた。 そのあと、緑の党のハーベック氏とベアボック氏がやはり声明を発表。こちらはリントナー財相がウクライナ支援を切り詰めようとしたことに対する苦情が前面に出ていた。 トランプ氏の当選を災厄と見做している彼らは、「今こそ民主主義の防衛のためにドイツが、いや、ヨーロッパが団結しなければならないというのに、ドイツの政治が揺らぐことは許されない」などと、足元ではなく、世界情勢の俯瞰に終始。緑の党も、現在、支持率が壊滅状態なので、もし、解散総選挙などになったら目も当てられないと、かなり動揺している様子が見てとれた。 そして、そのあとリントナー氏が登場。ショルツ氏の非難に対して、逐一反論するかと思いきや、驚くほど簡潔。ただ一言、「ショルツ首相は、借金増やせと最後通牒を迫ったが、私は “新たな借金はしない”という就任宣誓を破るわけにはいかない」と決然と述べた。まるでショルツ首相の必死の攻撃に肩透かしを食わせたようで、かなり印象的だった。