「バスケ漬け」の福岡第一高、坊主頭は「時代錯誤」とも言われるが…それでも部活のスタイル変えない理由
福岡・福岡第一高の男子バスケットボール部は、インターハイ(全国高校総体)で4度、ウインターカップ(現・全国高校選手権)で5度の優勝を果たした強豪だ。「勝ちながら、いかに心を育てるか」。1994年の創部以来、チームを率いてきた監督の井手口孝さんは、今もコートで生徒に寄り添う。 【写真】「日本一にしてあげたい」。熱い思いで選手を指揮する井手口さん
「この道を行けばどうなるものか」――。体育館にある監督室の机には、憧れていたアントニオ猪木さんの写真と猪木さんが引退する時に口にした詩が飾ってある。
厳しい下積みを経て道を切り開いた猪木さんの姿は印象的だった。「自分がスターになっても挑戦をやめず、転んでもただでは起きない。そういうところが格好よかった」。反骨心とチャレンジ精神にあふれた生き方に勇気をもらった。
かつて片隅しか使えなかった体育館は、バスケットボール部が両面を使えるようになった。練習の前後には全館を掃除し、体育館での行事の準備も手伝う。恵まれている状況は、歴代の部員の努力の上に成り立っている。
強豪校の中でも、福岡第一高ほどの「バスケ漬け」の環境は、今では珍しい。トレードマークの坊主頭は「時代錯誤」と言われることもある。それでも部のスタイルを変えないのは、生徒に「一つのことに本気で打ち込む体験をしてほしい」という信念からだ。
体育館で流した汗は糧になると確信している。部員とは家族のように接し、時に活を入れる。福岡県を拠点に中古車販売業を営む1期生の徳永純さん(46)は「あの時に培った辛抱強さは、仕事に生きている。先生が本気で向き合ってくれたから」と振り返る。
「うちに来る子たちで本当にうまいのは今もひと握り」と言う。それでも、「勝てば全員で『俺たちが日本一だ』って胸を張れる。だから、みんなで勝ちたい」。今年も集大成となるウインターカップが目前に迫った。険しい道の先に待つ栄光を信じ、生徒たちを導く。