『虎に翼』桂場は“穂高イズム”を失ったのか? 土居志央梨の“切実な表情”の説得力も
若手の仲間たちと勉強会を行っていた朋一(井上祐貴)が最高裁事務総局から家庭裁判所に異動を命じられた。『虎に翼』(NHK総合)第122話では寅子(伊藤沙莉)が様々な問題に頭を悩ませる。 【写真】航一(岡田将生)を見つめるよね(土居志央梨) 桂場(松山ケンイチ)はなぜ若手の裁判官たちを左遷したのか。頭を悩ませる寅子が調査官の音羽(円井わん)から受け取ったのは補導された少年の調査記録。「補導歴もなしで溜まり場での喧嘩よね?」と少年院に送致するには重いのではないかと寅子が尋ねると、音羽は「不処分にして彼の更生を信じるのは無責任」と詰め寄る。最終決定を下すのは裁判官であるというスタンスは崩さないものの、何やら寅子に対しても言いたいことが多そうだ。朋一、桂場、少年法、家裁……寅子には考えなければいけないことがあまりにも多すぎる。 そんな寅子が向かったのは桂場のいる事務所。寅子は朋一の異動について桂場に問いただすと、桂場は「俺がすべて指示した」と淡々と答える。それはつまり、政治的な圧力に屈して、その見せしめとして若手の裁判官たちを異動させたということだ。 続けて、「裁判官は孤高の存在でなければならん。団結も連帯も政治家たちが裁判の公正さに難癖をつける格好の餌食になる」という桂場の言葉に、寅子は「純度の低い正論は響きません」と反論する。司法の独立を守るために長官となった桂場のかつての思いはどこにいたのか。寅子は「あの日話した、“穂高イズム”はどこにいったんですか?」と訴えるが、桂場は耳を傾けようともしない。 「出ていけ。以後、二度と用もないのに訪ねてくるな」と険しい表情で寅子を追い出す桂場。そこでイマジナリー多岐川(滝藤賢一)が桂場の脳内に現れ、「お前の強権的な人事に嫌気が差した志高い裁判官たちはどんどん辞めていっている」「お前の掲げている司法の独立っちゅうもんは、随分寂しく、お粗末だな」と矢継ぎ早に言葉を投げかける。その妄想を振り切るように、「黙れ!」と怒鳴る桂場。あまりにも守らなければいけないものが大きすぎるがあまり桂場は孤独の道を選ばざるをえないのかもしれない。