適正飲酒啓発に新展開 「お酒の価値」も理解促進へ サントリー「ドリンクスマイル」 業界の取組み活発化
酒類大手が「適正飲酒」推進への取り組みを活発化させている。サントリーでは「ドリンクスマイル」と銘打つ新たな啓発活動に着手した。 「お酒は、なによりも適量です。」とのメッセージを盛り込んだ「モデレーション(中庸)広告」を1986年から展開するなど“ほどほど”に楽しむ適正飲酒の大切さを訴え続けてきた同社。当初は販売への影響を懸念する声も強かったものの、佐治敬三社長(当時)が社内の反対を押し切って開始したという。 今回の取り組みでは適正飲酒の大切さだけでなく、「お酒の価値」を伝えることにも重点を置くのが特徴だ。 「適正飲酒の啓発は、酒類メーカーとしての社会的責任のひとつ。これまでもアルコール関連問題の専門部署を設置したりセミナーを開催するなどしてきたが、もっとお酒の魅力を知っていただくため、新たな活動を開始する。お酒の席で飲む人、飲まない人が分け隔てなくそれぞれのドリンクで笑顔を分かち合えるようにしたい」。 6日の説明会で、鳥井信宏社長が狙いを述べた。
適正飲酒とともに、お酒の価値を実際に体験できる「ドリンクスマイルセミナー」を実施。そのすばらしい価値と適正飲酒について、俳優の吉高由里子さんが出演する動画で学ぶほか、ビールや缶チューハイなど複数カテゴリーから選んでその良さを体験。またVR技術を活用したバーチャル工場見学も計画している。来年から企業や自治体、大学などで年間3万人を対象に実施する予定だ。 今年2月には厚生労働省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表。健康のために飲酒量の低減を呼びかけた。 「ドリンクスマイル」はガイドライン公表以前から準備していたという。ただ同社では下期に計画していた度数9%のRTDの発売中止を決めるなど、業界は「脱・高アル」で足並みを揃えつつある。 さらに他の大手も、同様の取り組みに力を入れる。 アサヒビールが推進する「スマドリ」では、飲む人も飲まない人もそれぞれに合ったドリンクをスマートに楽しむことを提案。低アルやノンアルのメニューをそろえた「スマドリバー」などを展開する。キリンビールでも、お酒との正しい付き合い方への理解を広める「適正飲酒セミナー」の開催を今年5月からレギュラー化。年間25回の実施を予定している。 他社と連携した活動について問われた鳥井氏は、今のところ予定はないとしつつも「まさに適正飲酒は酒類メーカー共通の課題。具体的にできることがあれば前向きに検討したい」とコメントした。