「持って行ったお金を返せ」孫はなぜ大好きな祖母に泥棒と疑われたのか やむを得ない事情
認知症介護指導者の椎名淳一さんが、認知症の様々な悩みに答えます。 【関連】2階に泥棒、1階に霊媒師…義母の「もの盗られ妄想」に絶句したあの日から5年 嫁の体験記
Q.認知症の祖母(80代)が近所に住んでいます。先日遊びに行ったら、「この家から持って行ったお金を早く返せ」と怒鳴られました。病気のせいだとわかっていますが、大好きなおばあちゃんだったので、あまりにショックで立ち直れません(18歳・女性)
A.大好きなおばあさんにそんなふうに怒鳴られたら、ショックを受けるのは当然です。認知症の人は「もの盗られ妄想」といって、お財布やお金をどこに置いたのかを忘れてしまい、「誰かが盗った」と思いこんでしまうことがあります。特に疑われやすいのが、家族や頻繁に家に出入りしている人、例えばホームヘルパーなどです。記憶障害があると過去の関係性などではなく、“今”のできごとですべてを判断するので、家の中にいる人、頻繁に出入りする人を疑うのは、突飛なことではないのです。ですので、もしかしたらおばあさんが「置いたつもりの場所にお金がない」と気づいたタイミングで、偶然目の前に相談者がいただけのことかもしれません。 もの盗られ妄想があるときには、なくしたものを一緒に探してあげると、本人は安心すると言われています。ただ、怒鳴られた状態で一緒に探すのは難しいことかもしれません。ほかの家族に間に入ってもらって、一緒に探してもらうようにするといいのではないでしょうか。 一度怒鳴られると、怖くておばあさんの家には行きづらいと思います。でもおばあさんはものの見方が変わっただけで、おばあさん自身の性格などが変わったわけではありません。おばあさんのもの盗られ妄想は、不安がベースにあることも考えられます。認知症になると理解力が低下して、相手が何を言っているのかわからないことがあります。あくまでも可能性ですが、例えば相談者の話すペースがおばあさんにとっては速い、あるいは声が小さいといったことでうまく聞き取れず「相手がわけのわからないことを言っている」と不安を感じ、それが相談者を疑うきっかけになったのかもしれません。これを機にわかりやすい言葉で、ゆっくりていねいに話すことを意識してみてはいかがでしょうか。 このままおばあさんと疎遠になってしまうのは相談者自身もさみしいですよね。気持ちが落ち着いたら、ぜひまたおばあさんの家に行って、伝え方を意識しながら、コミュニケーションをとってほしいと思います。
【まとめ】認知症の祖母に「お金を早く返せ」と怒鳴られてショックから立ち直れないときには?
・認知症の人の「もの盗られ妄想」がなぜ起きるのかを理解する ・これを機におばあさんに安心感を抱いてもらうような話し方を意識する ≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫
椎名淳一