日本人選手が海外ツアーで必要なこと/星野陸也の欧→米ルート<後編>
コースに慣れ、環境の理不尽さに耐えた。だが星野を成功に導いたのは、強行日程にめげず旅を続けたガムシャラな姿勢にもある。「(気胸から)復帰して調子は戻ってきたけれど、100%ではなかった。だからポイントを少しずつでもため続けようと。最後は数十ポイントが大事になってくると思っていた」 終盤戦は欧州連戦の後に韓国での「ジェネシス選手権」を挟んで、アラブ首長国連邦での最後の2連戦。「欧州からいきなり韓国。時差もあり、連戦で体力もキツイ。たくさんの選手が休むところ。でも、『最後に数ポイントの差で負ける(PGAツアーに行けない)のだけは勘弁してくれ』と思って、出ました」。韓国で9位に入り、93.9ptを獲得。最終的にPGAツアー進出を逃した最上位の選手と、星野との差は約107ptだった。
「勘弁してくれ」で欧州→韓国→UAE
長いシーズンを戦う上で、いつも計算に頭を巡らせ、2年目の今季は「シードを取るためには450ポイント。PGAツアーに行くためには2000ポイント」を目標にしていた。初年度から各大会で待機選手として会場に行く際にも、前年実績を入念に調べ「この試合なら3人、これだったら5、6人は入れる…と毎回計算していた」 わざわざ出向いた会場で、試合に出られなければもちろん稼ぎはゼロだ。「数百万円、失う経費もある。でも、自分はゴルフをするために行くので。その分のお金はしょうがない、ゴルフのために稼いできてるから。世界ランクのシステムが改正(2022年8月)され、日本ツアーで得られるポイントが下がった。ランキングが上がらず海外ツアーにもっと出にくくなった。その悔しさがあったから、欧州の試合に出られるだけでもうれしかった。ウエーティングをして、出られなくてもコースで練習ができればそれでよかった」
PGAツアーへ
待ちに待った新天地での戦いは1月、ハワイでの「ソニーオープン」か、カリフォルニア開催の「アメリカンエキスプレス」が初戦となる見込み。「環境が変わるので、欧州1年目に近い感じ。まずは1試合ずつ見極めながら、コンディションを整えたり、上位に行けるように頑張りたい。欧州からPGAツアーに行ってすぐに優勝した選手もいる。ロバート・マッキンタイア(スコットランド)にマチュー・パボン(フランス)。ツネちゃん(久常涼)もシードを獲った」。かつての同僚の昨季の活躍も背中を押してくれる。 「自分はタイガー・ウッズとマスターズを見てゴルフを始めた。マスターズもまだ出たことがない。ゴルフを始めたきっかけがPGAツアー。その舞台に立って、タイガーやロリー・マキロイと戦いたいと思って、スイングづくりも、クラブづくりもやってきた」。まだまだ挑戦をやめられない。