日本人選手が海外ツアーで必要なこと/星野陸也の欧→米ルート<後編>
バミューダグリーン対策とカタール優勝の布石
違う環境に順応しようと、星野は早いうちから“インプット”に神経を研ぎすませた。今年2月の「カタールマスターズ」での初優勝は紛れもなく、前回大会の経験が功を奏したという。 「日本にはバミューダ芝の様なカサカサして、硬くて速い、それでいて芽が強いグリーンが少ない。1年目はボールが全然真っすぐ転がらなかった。でも苦手なものをなくさないと、優勝できない。打ち方を変えてみたりした」と明かす。「ちょっと短く持って、ゆっくりストロークする」のが編み出した攻略法。「カサカサ系の芝の上でボールは少し浮くので、滑りやすく、ちょっと右に出やすい。テンポをゆっくりにして、球を捕まえるような、フェースに乗せるような打ち方を覚えた」 参戦1年目の23年大会は10月下旬に行われ、今年は日程が2月に変更されたおかげで、つかんだ感触を手放さないうちにドーハに帰って来られた。「上位には行けると思っていたんです」。海外初優勝には布石があった。
受け入れた「どうにもできない」
パターに貼る鉛は0.1g単位。見た目はおおらかなようで、星野はゴルフに関しては特に”細かい”ことで知られている。繊細な性格は主戦場を移してから少しずつ変化した。毎週プレーする国が違う欧州ツアー。言葉の壁、環境の違い。「どうにかしたいけど、どうにもできない」が多すぎる! 「1年目はレンタカーも借りられず、(大会が用意する)オフィシャルホテルに泊まってコースとの往復ばかり。アジア料理を食べたいけれど、歩いて行ける場所になんかない。朝昼晩、パスタばかり。2カ月、毎日食べてみてください…」 移動トラブルのリスクは尽きず、ガマンを強いられてばかり。優勝したカタールでも珍事があった。大会期間中、同国では日本代表も出場したサッカー・アジアカップが開催。市街地のビルにはプロジェクションマッピングが施されるなど、盛り上がりを見せていた。 「コースからレンタカーで帰ろうとした時に、めちゃくちゃ渋滞した日があって。窓を開けて聞いてみたら、『今からキングが通るから(スタジアムまでの)道を封鎖している』って」。さすがカタール王国…。「キングならしょうがない(笑)。そこで1時間くらい信号待ちをした」。積み重ねた経験は、忍耐力も養った。