恐ろしい…「世界株指数さえ買っていれば大丈夫」という思い込み 世界株一本足打法を襲う“3つのワナ”【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
※本稿は、チーフグローバルストラテジスト・白木久史氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。
------------------------------------- 【目次】 1. 「世界経済の成長に投資する」は本当ですか? 2. 「分散」できていますか? 3. 「リスクオフ」で起こるダブルパンチ ------------------------------------- 【関連動画】エミン・ユルマズ×白木久史「日本株への投資はまだ間に合うのか!?」 世界の株式に広く投資する投資信託が人気です。今年の新NISAのスタート以降、世界株インデックスに連動する投資信託で積立て投資を始める方が急増しているようです。プロの世界では一般的な、低コストの世界株インデックス投資が個人投資家にも広がってきたことは、投資に奥手だった日本人にとって特筆すべき進歩といえそうです。とはいえ、わたしたちの投資がこうした「世界株インデックス」に集中しているとしたら、気がかりな点がないワケではありません。そこで今回は、こうした「世界株一本足打法」を待ち受けるワナと、その回避策について考えてみたいと思います。
1. 「世界経済の成長に投資する」は本当ですか?
■世界株インデックスに投資をすることで「世界経済の成長に投資できる」という解説をよく耳にします。少子高齢化が進み、自国経済の成長に自信が持てない日本人にはとても魅力的なお話に聞こえますが、こうした解説は世界株インデックスの実像とは異なる「美しい誤解かもしれない」といったら言い過ぎでしょうか。 ■世界株インデックスの国ごとの投資配分は、株式市場の時価総額の大きさにより決まります。このため、時価総額が世界でダントツ1位の米国株の組入れ比率が突出することとなります。 <米国をオーバーウエイトして高成長のアジアはアンダーウエイトする世界株インデックス> ■足元で世界株インデックスに占める米国株のウエイトは約63.8%に上ります(2024年3月末時点)。一方、世界経済に占める米国経済のウエイト(名目GDP)は約26.8%に過ぎません(2022年末時点)。こうして見ると、世界株インデックスは「世界経済への投資」というよりも、「米国経済への重点投資」といった方が実態に近いようです(図表1)。 ■もちろん、こうした米国への集中も、米国経済の成長スピードが世界経済を上回っていれば大きな問題とはならないかもしれません。しかし、残念なことに2000年以降の約22年間の経済成長率を見ると、米国は約151%にとどまり、世界経済の同約202%を下回っています(図表2)。 ■ここもとの世界経済の成長は、主に新興国の急拡大に支えられていて、同期間の新興国経済の成長率は実に約569%に達しています。中でも、中国、インド、東南アジアなどのアジア新興国の成長率は約793%に達し、「世界の成長センター」と呼ばれています。しかし、世界経済の約29.7%を占めるアジア新興国の株式は、世界株インデックスには約7.8%しか組み入れられていません。このように、成長地域への投資がGDP比で極端に小さい世界株インデックスについて、「世界経済の成長に投資できる」とする解説は、かなり「盛った話」といえそうです。
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