伊首相も「公平な試合ではない」と苦言 性別騒動の女子ボクサーを巡って波紋 IOCも声明を公表「権利を持っている」【パリ五輪】
現地時間8月1日、パリ五輪ではボクシング女子66キロ級の2回戦が行なわれ、昨年の性別適格性検査で不合格となって議論を呼んだイマネ・ケリフ(アルジェリア)が勝利した。開始わずか46秒で対戦相手のアンジェラ・カリニ(イタリア)が棄権し、準々決勝に進出を決めた。 【動画】顔面がボコボコに…ケリフがメキシコ人選手にRSC勝ちしたシーン 世間を騒然とさせる決着だった。開始早々にケリフが2発の強烈なパンチを浴びせると、被弾したカリニが鼻を負傷したとして試合続行を断念。動揺したカリニは「不公平よ……」とつぶやき、ケリフの握手を拒否し、リングに膝をついて泣き崩れた。 2021年の東京五輪では女子種目に出場したケリフは、昨年にインドで開催された女子世界選手権時に、国際ボクシング協会(IBA)が実施した性別適格性検査に失格。「女子競技の参加資格を満たさなかった」とし、出場権を剥奪されていた。 しかし、パリ五輪における競技運営権を持つ国際オリンピック連盟(IOC)は、「女子カテゴリーに出場する選手は全員、競技参加資格を満たしている」と強調。ケリフの女子競技参戦が医学的にも問題がない、判断していた。 とはいえ、疑念は拭いきれていない感は否めない。カリニを2発で圧倒したケリフには、とくにイタリア側から批判の声が噴出。ついには首相が苦言を呈する事態ともなっている。 試合後に地元メディアの取材に応じたイタリアのジョルジャ・メローニ首相は、「彼女(ケリフ)の血中テストステロン濃度が高かったのは事実であり、決して公平な試合ではなかった」と指摘し、「IOCには同意できない」と断言。「差別しないように注意しなければならない」としつつ、問題解決を訴えかけている。 「私は男性の遺伝的特徴を持つ選手が女子の大会に出場することは許されるべきではないと考えている。それは誰かを差別するためではなく、女子選手が平等な条件で競技する権利を守るためにね」 時の首相が意見する異常事態にIOCも黙ってはいない。試合後に発表した声明内で「すべての人は差別なくスポーツをする権利を持っている」と強調。ケリフらが「女子カテゴリーの大会で長年にわたり活躍してきた」との認識を示した上で「IBAによる突然の恣意的な決定で、正当な手続きもなく失格となった」と、騒動の発端となったIBAの検査に対する考えを明らかにした。 複雑な事情が絡んでいる同問題。女子ボクシング界で波紋は広まる一方だ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]
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