<春再び・センバツ2021東海大相模>応援する仲間たち/上 先輩の思いも背負い 声出せなくても「姿で見せる」 /神奈川
センバツの開幕まで2週間となった3月上旬、東海大相模野球部が練習するグラウンドのそばに、応援委員会のチアリーダー部員の姿があった。ポンポンを手にし、録音した吹奏楽部の演奏に合わせて振り付けの確認を進める。「常に集中してやっている野球部の姿を見て、応援を頑張らないと、と思う」。甲子園の舞台を待ちわびているのは、野球部の選手たちだけではない。 新型コロナウイルスの影響で、2020年春のセンバツは中止され、野球部が出場した昨夏のセンバツ交流試合は無観客での開催になった。今回のセンバツではブラスバンドの演奏は禁止、声を出せないなどの制限はあるが、甲子園のアルプススタンドで応援ができる。応援委員会の応援団、チア部のメンバーは「先輩の思いも背負って応援したい」と気持ちを一つにしている。 チア部員は28人。野球部の応援は活動の中でもメインだ。少人数のグループに分かれた練習では「声出し」をするが、全体では新型コロナの感染防止のために声は出さず、CD音源に合わせて踊る。 2年の曽我友里絵部長(17)は「声を出すことで自然と笑顔になるから、出せないと応援の雰囲気がつかめなかったり、なかなか笑顔になれなかったり。大変な面がある」と話す。 その分、「制限はあるが、どんな形であっても野球部につながる応援がしたい」とモチベーションを高く保って、互いにアドバイスをしながら動きがそろうように練習している。「自分たちの代で初めての舞台。気合を入れてスタートをきりたい」という。 曽我さんはセンバツ交流試合で実施した、試合中継を見ながら校内のホールから声援を送るリモート応援に参加した。「雰囲気は味わえた」というが、それだけにアルプススタンドは特別だと思う。「現地に行って実際に野球部の試合している姿を見て応援することに勝るものはない」と心待ちにしている。 制限の影響をより受けるのが応援団だ。「声で統率を図る」ことで、スタンドに一体感を作りだそうと思っていた。その声が、今回は出せない。団長の2年、村上胡桃(くるみ)さん(17)は「どうしたら一体感が出せるのか。野球部に届くか」と頭を悩ませたという。 村上さんに1年の2人を加えた3人の団員にスタンドでの応援経験はなく、引退した先輩も交えてどうすべきかを考えた。取り組んでいるのは、「姿で見せる応援」だ。吹奏楽部の演奏を録音した音源に合わせ、応援団は太鼓と型でスタンドを盛り上げる。駆けつけた生徒にはスティック形のバルーンを手に持ってもらい、たたいて応援するという。 応援団は今年、8人いた3年生が卒業。最後の年に、楽しみにしていた甲子園のアルプススタンドでの応援はできなかった。村上さんはその分も、先輩の思いを背負っている。「相模に流れを引き寄せられる応援をしたい。『さすが相模の応援団だな』と思ってもらえるような応援をしたい」【宮島麻実】