不登校が悪化する「見守りましょう」のアドバイスから「放置」に陥らぬよう注意、カウンセラーが警鐘!
◆「学校へ行きたくない」と言われたら…。休ませるかどうかの判断は?
子どもから「学校へ行きたくない」と言われたら、保護者はどこまでその言葉を尊重すべきでしょうか。スクールカウンセラーとして20年以上従事した公認心理師の吉田克彦さんは、「学校の行き渋りは、初期対応が大切」と語ります。 「学校へ行かせるべきか悩んだときは、言葉以外のサインに注目してみましょう。表情の変化のほか、布団から起きられなかったり、いつもと食べる量が違ったり、普段と違う様子を見せているかもしれません。さらには、保護者自身が幼い頃、どういう状況であれば『休みたい』と言いつつ学校へ行っても大丈夫だったかを思い出して、総合的に判断するといいと思います」 注意したいのは、学校へ行くことに保護者が固執した結果、子どもの気持ちに余裕がなくなってしまうことです。学校でいじめられている場合、家族からも学校へ行くよう促されると、子どもは追い詰められてしまい、最悪の場合は自死を選ぶケースがあります。背中を押すべきか、見守るべきか。吉田さんは、「押したり、引いたり、言葉かけを工夫しながら様子を見てほしい」と語ります。
◆休んだ後のフォローが大切。見守りと放置の違いに注意して
学校を休む選択をした場合、保護者の心には「休ませてよかったのか」と葛藤が残ることもあるでしょう。吉田さんは「休んだら、その日のうちに子どもとしっかりとコミュニケーションを取って」とアドバイスします。 「学校に行きたくないと突然言われた日は、保護者にとって想定外の出来事。ですから、しっかりと対応できなくても仕方がありません。しかし、翌日も『行きたくない』と言われるのは、多少想定できるかもしれません。であれば、その日のうちにしっかりと話し合いをすることです。『今日はどうして行けなかったの?』と尋ねてみるといいでしょう。 その中で、子どもが『明日も休みたい』と言い出したら、理由を聞く。もし休ませた方がいいと判断した場合は、『学校を休むほどつらいなら、寝ているか、本を読むかだけ。ゲームはできないよ』などとルールを決めてください。場合によっては、テレビのリモコンやゲーム機を、昼間の時間帯だけ保護者が預かって使えなくしてもいいでしょう」 スクールカウンセラーから、「子どもを見守りましょう」とアドバイスされて、本人の好きなように過ごさせている家庭があるようですが、家庭内のルールがなくなると、子どもたちにとって好き放題の生活になってしまいかねず、不登校が長期化する傾向があるからだと言います。 吉田さんが担当したある不登校児童は、「朝の7時半まで、寝ていれば自分の勝ち」と話す子がいたそう。 「その子は、『朝の7時半まで寝たふりをすれば、家族は仕事で出掛けるから、そのあとはゲームし放題だ』と言うんです。『本人のやりたいことを尊重したい』と言う家庭もありますが、自由に遊ばせるのは見守りではなく“放置”に近い状態です。 公園で遊ばせるときに、ボールが道路に飛んでいったら子どもが追いかけるのを必死で止めるのと同じように、見守りとは危険なことから子どもを守りながら様子を見ることです。体調不良で休むわけじゃなければ、家庭のルールを設定するのが大切です。もし、学校を休んだ次の日からルールを決めるのが難しければ、3日目からでも、1週間目からでも構いません。話し合って決めていきましょう」