不登校が悪化する「見守りましょう」のアドバイスから「放置」に陥らぬよう注意、カウンセラーが警鐘!
◆子どもに頼る、任せる機会を作って自信につなげる
不登校といえど、その原因や状況はさまざまですが、長期化したときに年齢や状況に関係なくおすすめできる方法の一つとして、吉田先生は「子どもに頼る、任せる機会を設けて」と語ります。 「よくおすすめするのは、保護者が子どもに愚痴を聞いてもらう方法です。『職場の上司がこういう人でイライラする』『仕事に行くのがつらい』と打ち明けるんです。すると子どもは自分のことを棚上げして、『そんな人なんか、気にしなくていいよ』と正論を返してきます。そのアドバイスを『参考にしてみるよ。聞いてもらって助かった』と喜んでください。そうやって保護者の役に立つ経験が、不登校当事者の自己肯定感や自信につながります。 相談内容は、愚痴以外でもいいのです。『明日の夕飯、何がいいかな』と相談するのもいいでしょう。ハンバーグと回答されたら、『こんなにおいしいハンバーグができた。○○のおかげだね』と褒める。そこから『今度、ハンバーグを作ってくれない?』とお願いしてみるのも手です。子どもが自分の部屋から出るきっかけにつながりますし、活動が増えれば疲れて夜に眠る習慣が戻ってくることもあるでしょう」 過去には、「昼食作りを子どもに任せたら」と吉田さんがアドバイスしたことを機に、子どもの将来の夢につながったケースもあるそう。不登校の当事者は高校生で、同居する祖父の昼食作りも担当するようになり、それがきっかけで料理にハマって調理師を目指すようになったと言います。 「不登校になると『あれもできない、これもできない』とネガティブになりがちです。だからこそ、『任せてよかった』と思える出来事を家庭で作っていきましょう」 最後に、「不登校に多い、0か100で考える『白黒思考』に気を付けて」と吉田さん。 「『遅刻するくらいなら、学校行きたくない』と考えるのではなく、ぼちぼちやっていくという選択を加えることです。0か100じゃなくて、1点を稼ぐ。ときには1点下がってしまうこともあると思いますが、それもありという心構えが大切です」 不登校が身近になった現代。大人も仕事のモチベーションにグラデーションがあるように、子どもも学校に対する熱意に波があることを理解することが大切なのかもしれません。そして、子どもが不登校になってから慌てるのではなく、日ごろから「学校へ行きたくない」と言われたら、どのような返答をするのか、方針を考えておくのも大切です。 取材協力:合同会社ぜんと代表 吉田克彦 精神保健福祉士、公認心理師。福島県出身。大学在学中に不登校や引きこもりの問題を抱える家族支援を目的としたNPO法人を立ち上げる。その後、スクールカウンセラー(小学校・中学校・高校)、東日本大震災被災地心理支援、一部上場企業の企業内カウンセラーなどを経て、個人向けカウンセリングサービスと企業向けメンタルヘルスサービスを提供する合同会社ぜんとを設立し現在に至る。「不登校なんでも相談室」を運営。 この記事の執筆者:結井 ゆき江 中学受験雑誌の編集者として勤務したのち、フリーランスの編集者・ライターとして独立。教育や生き方、地域情報などを中心に取材・執筆を行う。グレーゾーンの小学生をサポートした経験も。
結井 ゆき江