40年続く“王国”を打破した「日本の女性議員」に、米紙が感じた変化の予兆─いまだ「かわいいから当選する」と言われるが…
2024年10月の総選挙では、過去最多の女性衆議院議員が誕生することとなった。そのうちの一人である岡田華子は、青森県初の女性衆議院議員となったばかりか、この地で40年近く議席を維持し、「木村王国」とも呼ばれる木村一族の牙城を崩して、青森3区初の自民党以外の当選者となった。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が今回の選挙を受け、日本の女性議員を取り巻く現状を取材している。 【画像】40年続く“王国”を打破した「日本の女性議員」に、米紙が感じた変化の予兆
勝つ可能性は「ほとんどゼロ」
2023年の夏、東京の弁護士で2人の幼い子供の母親でもある岡田華子(44)は、幼少期を過ごした青森県の田舎から衆議院選挙に出馬する計画を立てはじめた。彼女が相談したほぼ全員が、勝てる可能性はゼロに近いと言った。 彼女は立憲民主党の候補者として、1955年以来、4年間を除いて政権を運営してきた自民党の現職、木村次郎と戦うことになった。木村の祖父、父、兄はみな、青森県の選挙区で当選し、衆議院議員を務めた経験がある。 一方、政治に関して初心者の岡田は、四半世紀以上も前に大学進学のため故郷の弘前市を離れており、この地の住民からしてみれば、知らない人も同然だった。 日本は民主主義国家のなかで女性の政治家が最も少ない国のひとつだ。10月下旬の総選挙前の時点で、衆議院議員における女性の割合は10.3%だった。国会議員間の相互理解増進と平和の実現を目指す国際組織、列国議会同盟(IPU)によると、この数字は183ヵ国中163位だ。 「誰もが心のどこかで不可能だと思っていたでしょう」と岡田は言う。 しかし実際には、岡田が現職の木村を破って当選を果たした。木村一族はこの地域で衆議院の議席を40年近く守ってきた。そんななか岡田は、日本のリンゴの6割を生産し、高齢化と過疎化が急速に進む青森県の小選挙区で、初めて当選した女性となった。
母親と政治家の両立
今回の総選挙では、過去最多となる73人の女性が当選した。衆議院議員における女性の割合は15.7%と過去最高となり、日本の政治において女性がより大きな役割を果たす未来を予感させる。 選挙に勝利したことで、岡田は日本の実社会の大部分と同様、女性、とくに母親に優しくない政界文化を変える機会を得た。 「『子供がいるので8時くらいには帰りたい』と言える政治家になりたいです」と岡田は言う。「あるいは、『子供たちと遊びたいので、日曜日にゴルフはしたくない』とか」 今回の女性議員の増加は、人々が男女平等を求めた結果というよりは、国民の自民党への批判を体現したものだ。 有権者はくすぶり続けている政治資金スキャンダルのほか、上がらない賃金、インフレ、労働力不足などに不満を抱いていた。男性と世襲議員が多数を占める自民党は15年ぶりに衆議院で過半数を割り込んだ一方、より多くの女性候補者を擁立した野党が議席を増やした。 女性を選出することは、「新世代の政治家が必要だということを伝える手段だ」と、IPUでジェンダーと青少年のプログラムを担当するゼイナ・ヒラルは言う。
Motoko Rich and Kiuko Notoya