なぜ阪神は守護神の藤川を温存して横浜DeNAにサヨナラ負けを喫したのか?
残り20試合を切った。もう後がない戦いである。 藤川が打たれた、或いは、藤川の後の投手が打たれた。まだそれなら納得がいく。藤川を温存したままの敗戦はチームの士気にかかわる。 阪神のベンチワークの見えないミスはまだあった。 追加点が欲しかった7回、先頭の高山がヒットで出て無死一塁。打席に入った北條は、バントの構えだったが、横浜DeNAの4番手、三嶋のコントロールが乱れてストライクが入らない。カウント3-0。続く4球目を北條はバントの構えのままストライクを見逃した。あくまでも推測だが、北條の見逃し方を見る限り、ベンチは「待て」のサイン。ベンチが欲を出したのだ。カウント3-0からのストライクは、最もバントが容易だと言われている。 走者を得点圏に進めたいのならば「待て」ではなくバントのサインである。ストライクを取られて3-1になると、あと1球しか余裕をもってバントはできない。案の定、北條は、次の外のボールをファウル。フルカウントになってもベンチは打たさず続けてバントのサイン。硬くなっていた北條は、バットの先にボールを当てて再度ファウルで三振となった。 北條の技術が足りなかったことも事実。だが、ベンチワークも北條の能力を引き出すための最善で繊細なものではなかった。 “たられば”はプロの世界にないが続く原口にヒットが出た。一死一、二塁となり、ここで代打・鳥谷。先月29日に“引退勧告”を受けて以来、初めての打席である。今季限りで、縦じまのユニホームを脱ぐ鳥谷に横浜ファンも拍手を送った。ハイライトシーンだったが。結果は、ショートゴロ。5番手の左腕・石田に木浪も凡退し追加点を奪えず、このことが後々響いてくることになる。 さらに細かいミスもあった。 8回に先頭打者として高山の持つ球団の新人最多安打記録にあと1本に迫る135安打目を放った近本が石田の牽制で刺された。全力で頭から滑って帰塁していればセーフだっただろう。だが「投げてこない」と早合点したような中途半端な帰塁でアウトになった。 実のところ横浜DeNAも、首位の巨人を追撃にするには心もとない大雑把な野球をしていた。先発の井納は、投手の秋山にタイムリーを許し、一気に勝負をつけなければならなかった6回無死満塁から追加点を取れず、少しイレギュラーがあったといえ、6回満塁の場面で大和が正面のゴロに足が動かず弾いてしまうミスもあった。 逆転首位獲りには物足りなさを露呈したが、筒香の一発で、すべてが帳消しになり、「スペシャルな1日になった」と、ラミレス監督はエキサイトしていた。 横浜DeNAは4連敗の首位の巨人とのゲーム差を2.5に縮め、阪神は3位の広島とのゲーム差が2.5のままになり、5位の中日に背後から2.5差で迫られることになった。 偶然にも「2.5」という数字が3つ並ぶことになったが、その数字に表れない中身には、ずいぶんと差があるようだ。