なぜ阪神は守護神の藤川を温存して横浜DeNAにサヨナラ負けを喫したのか?
阪神が5-1のリードを守れずに横浜DeNAにサヨナラ負けを喫した。5-5で迎えた延長10回一死一塁から筒香のプロ入り4本目となるサヨナラ2ラン。この日は、逆転優勝を狙う横浜DeNAと、CS進出を狙う阪神の互いの対象チームである首位の巨人、3位の広島が敗れて絶対に負けられないゲームだった。チームモチベーションの差が露呈したとも言えるが、阪神には、ストッパーの藤川を温存したまま負けるベンチの采配ミスがあった。横浜DeNAは巨人に2.5差に接近、阪神は広島とのゲーム差を2.5のまま縮めることができなかった。
重なった配球ミスに制球ミス
ゲームを支配していたのは阪神だった。6回の攻撃が終わって5-1。だが、この日、8月7日の広島戦以来となる4番に戻った筒香は、「点差が開いてもあきらめない。負ける雰囲気がなかった」という。 阪神バッテリーが隙を見せた。6回無死一塁から2番に入っていたソトに対して先発の秋山がカウント3-0から中途半端な高さにカットボールを投じた。 外国人選手のソトだけに限らず、積極的な横浜DeNAは、このカウントからでも好球必打を推奨している。バックスクリーン右へ2点差とする35号2ラン。さらに続くロペスの平凡な三塁ゴロをさばいた北條の一塁への送球がそれた。そこで秋山から島本へ投手交替。2番手の島本は、筒香に四球を与え、無死一、二塁から佐野に初球をライト線に引っ張られてついに1点差にされた。 阪神は8回から勝利の方程式に入ったが、ここまで被本塁打ゼロだったジョンソンが佐野に同点アーチを浴びた。今季の阪神はハマスタの狭いバッターズフィールドを有利に使い、6勝4敗と勝ち越していたが、ついに逆手に取られた。阪神は9回にドリス、そして延長10回に40歳のベテラン、能見をマウンドへ送った。 ベンチの最大の采配ミスは、この能見の選択だ。打順はソト、ロペス、筒香。なぜ“守護神”の藤川ではなく能見だったのか。藤川は、心技体共に準備は整っていた。先攻めの阪神からすれば「リードして藤川」の考えだったのかもしれないが、横浜DeNAの2、3、4番の“最強の並び”を乗り越えなければ、そこでゲームは終わる。「いいピッチャーから投入する」は延長戦の原則だ。監督として藤川という切り札を温存したままの敗戦は最悪である。 能見はソトを三振に取ったが、ロペスを歩かせた。打席には、左対左ながら、今季2打数2安打と相性の悪い筒香。カウント2-1から逆球となったスライダーが真ん中に寄った。鈍い音。打球はライトへ高々と舞った。 打った瞬間、筒香はバットを投げベンチへ向かって両手を掲げた。 「(打った瞬間)いったかなあと思いました。後ろに今日ホームランを打っている佐野君がいたのでなんとかつなごうと思って打席に入っていました」 筒香の声がスタジアムに響き渡った。 筒香は、前の打席は高めの釣り球を振ってスイングアウト。この打席もストレートへの反応は立ち遅れていた。ここは変化球を見せてから定石通り長打警戒の配球である外のストレート勝負でいくべきだったのだ。