巨人解雇のロペスが横浜で蘇る
本人の意識も一変 打撃スタイルの変革に取り組む
一塁の守備力には、元々定評があるが肝心の打棒にも変化の兆しが見えている。 連日、宜野湾のネット裏に陣取っている阪神の御子柴スコアラーが言う。 「去年までのロペスは、試合に出るため下位打線の中で一発を打ってアピールするしかなかった。今年はクリーンナップに起用されそうだから気持ちが変わっている。もっと率を追うんじゃないだろうか。ボールを点ではなく線でとられるイメージでスイングするバッターで右にも打てる。チャンスでそういうバッティングを意識されたら怖い存在になるね」 来日1年目は、打率.303、18本塁打、55打点の成績を残した。昨年は本塁打こそ18本から22本に増えたが、打率.243と低迷した。特に5月に.205、9月に.174と悪かった。アンダーソンや阿部に一塁のスタメンを奪われるケースも多かった。その不振の原因をロペス自身は、こう分析している。 「昨季は調子を落としたわけではなかったんだ。私のデータを2年目にかなり研究された。その影響だと思う」 確かに不振の原因とも言えるデータがある。 球種別のデータを見ると、カーブの打率は.375と高いが、フォークの打率が、わずか.083しかない。またカウント別に見ると、ノーボールワンストライク、ワンボールワンストライクという0-1、1-1のカウントからの打率が、いずれも1割台。カウント別での打率が3割を超えているのは、ボールが先行して、ファーストストライクを仕留めたもの。つまり、ひとつでもストライクを先行されると、いわゆる凡打ゾーンを攻められて、そこに手を出してしまっているのである。特に落ちるボールに弱かった。 ホームランは22本中、ソロアーチが16本。前述の阪神スコアラーが指摘したように、アンダーソン、セペタとのチーム内競争を勝ち抜くための一発狙いが目立った。それも追い込まれたカウントや、落ちるボールに対応できなかった理由のひとつだろう。 だが、今季は、打撃スタイルの変革に取り組んでいるのが、キャンプのバッティングを見ているとよくわかる。右打ちやセンター返しを意識している打席が少なくない。明らかにホームランよりも、チームの勝利のための得点圏打率アップをテーマにしている。 その点をロペス自身に尋ねたが、「去年も何もホームランを狙っていたわけではかった。今年はクリーンナップを打つかどうかもシーズンに入らねばわからないし、どういうテーマでバッティングに関する準備をしているかも口にしたくない。それが他チームに伝わって、また対策を練られるのも困るからね」と、うまくはぐらかされた。 昨季ロペスは対横浜DeNAに打率.316、7本塁打、14打点という数字を残した。横浜DeNAキラーを巨人から排除するだけでも、大きなプラス戦力。「なぜ横浜戦で打てたかの理由は自分ではわからないんだよ。巨人戦に対して特別な感情はないが、自分の力を最大限に出すよ」とロペスは決意している。 目標数字は設定していますか?と聞くと「そういう数字は設定しないようにしているんだ。なるべく多くの試合に出てチームが勝つこと。目標はそこだけだ」と答え、こちらが困った顔をしていると、日本語で「ゴメンナサイ」と言って笑った。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)