スーパーカーブーム時代に「カウンタック」と双璧をなしたフェラーリ「512BB」が狙い目! クラシケ取得でも5000万円以下が相場のようです
英国のコンクールを荒らしまわった512BBなれど、オークションでは流札……
このほどRMサザビーズ「Cliveden 2024」オークションに出品されたフェラーリ512BBは、シャシーナンバー「20825」。929台が生産された512BBのうち、正規の右ハンドル仕様は101台のみで、この個体もそのひとつである。 ファーストオーナーは、当初1976年1月に「アルジェント・オートゥイユ」なる、パリの地名から命名されたというシルヴァーメタリックのボディカラーで365GT4/BBを注文していた。 ところが、その年のパリ・サロンで512BBが発表されたことにより、すぐにその注文はキャンセル。「ヴェルデ・メディオ(のちの512BBiを含めてもわずか5台しか存在しない希少なグリーン)」に「ベイジェ」のコノリー社製レザーインテリアの512BBとして、オーダー差し換えとされることになった。 翌1977年2月7日に完成したこの512BBは、サリー州エガムの英国輸入代理店「マラネッロ・コンセッショネアーズ」社に新車として引き渡されたのち、オックスフォードシャー州ヘンリーのメインディーラー「マルティン・カー・コンセッショネアーズ」を介して、1977年3月19日に初代オーナーであるN・F・ブートロス氏のもとで初登録。同氏はそれから、このシャシーナンバー20825を7年間にわたって保持したという。 2人目のオーナーは1980年代半ばにこの512BBをニュージーランドに輸出し、3番目のオーナーは2004年に日本へと移送。さらにそれから10年後、この512BBは英国へと舞い戻り、メイドストンの「フェラーリ・センター」社によって購入されたのち、3年の歳月をかけて完全なレストアが施された。
コレクションに加えるにふさわしい1台
今回のオークション出品者でもある現オーナーは2016年7月、「フェラーリ・センター(のちにケント・ハイパフォーマンス・カーズと改名)」からシャシーナンバー20825を購入し、その2カ月後には「フェラーリ・クラシケ」から、512BBがマッチングナンバーのボディ/シャシー/エンジン/ギアボックスを保持していると認定を受けた。 そして現在「ロッソ・コルサ」のボディカラーに「ペッレ・ベイジェ(ベージュ革)」のインテリアを組み合わせた現在の仕上がりを物語るかのように、この512BBは数々のコンクールで受賞している。 とくに、2021年にブレナム宮殿で開催された「サロン・プリヴェ・コンクール・デレガンス」ではフェラーリ部門の「セクレタリートロフィー」を獲得したほか、2023年9月にダウン・ホールで開催された「フェラーリ・オーナーズ・クラブ・サマー・ガーデン・パーティ」および「チャールズ・スタンレー・インターナショナル・コンクール・ギャザリング」でも、「ベスト・イン・ショー・メンバーズ・チョイス」のプレジデントカップを受賞している。 オークションの公式ウェブカタログ作成時の走行距離は3万1320マイル(約5万400km)。また今回の出品に際しては、オリジナルのオーダーフォームとディーラーのインボイス、フェラーリ純正のオーナーズマニュアルにセールスパンフレット、フェラーリ・クラシケの「レッドブック」が添付されていた。 「ケント・ハイ・パフォーマンス・カーズ」社によるレストア以来、このクルマは毎年の定期点検と、英国の車検に相当する「MoT」のテストを受けており、最新の点検は2024年の4月に実施されたばかり。また、2022年にはボクサー12エンジンを降ろして、このモデルの重要な項目であるカムベルトの交換も行われている。 今回の出品にあたって、RMサザビーズ欧州本社では「数々の賞を受賞したこの512BBは、あなたのコレクションに加えるにふさわしい1台となるだろう」というPRフレーズを添えて、20万ポンド~25万英ポンド。現在の為替レートで日本円換算すれば約3960万円~4950万円という、ちょっと控えめかとも思われるエスティメート(推定落札価格)を設定した。 ところが、競売会場では予想したほどにビッド(入札)が伸びず、出品者とオークショネア側で設定したリザーヴ(最低落札価格)に届かないまま終了。それでも、オークション後に営業部門が販売したようだが、最終的な売却価格は公表されていない。
武田公実(TAKEDA Hiromi)
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